震災後に袋原のNPOが開発した防災ゲーム、親しまれて10年<南仙台ウイーク>

災害への備えを学ぶ仙台市発祥のボードゲーム「そなえゲーム」が今年、誕生から10年を迎えた。中心となって開発したのは、防災・減災事業などに取り組むNPO法人「FORYOUにこにこの家」(太白区袋原3丁目)。東日本大震災を教訓にしたゲームは各地で活用され、防災意識の底上げに一役買っている。

 自宅にあったらいい物は「飲料水」「携帯ラジオ」、自分でできたらいい活動は「近所の高齢者への声がけ」「自分の避難する場所を知る」…。そなえゲームで使うカードの一例だ。

口コミで評判 県外に広がる「人に優しい地域に」

 参加者は6~8人の班に分かれ、例えば1人暮らしの「きくのさん(80代)」、妻、息子と暮らす「しょうさん(20代)」になりきる。自宅、学校などが描かれた地図上に、それぞれの立場で必要と思うカードを置いていく。

 開発のきっかけは、NPO法人の理事長を務める小岩孝子さん(71)=太白区=の経験だ。震災の津波が地元の東中田地区に迫り、法人が指定管理する東四郎丸児童館に約300人が避難してきた。

 「俺は寝ないでラジオを聞くから、みんなは安心して寝てろ」と呼びかける高齢男性、乾パンを配る中学生。避難者は自主的に役割を見つけ、動き回っていた。小岩さんは「自分にできることを考える大切さを伝えよう」と決心した。

 法人が音頭を取って、市と市民有志でつくる実行委員会を2012年3月に設立し、13年8月にそなえゲームを完成させた。その取り組みは口コミで広がり、東京、石川など県外の町内会や社会福祉協議会から、遊び方を教えてほしいと声がかかっている。

 「市民協働で作り上げたからこそ、そなえゲームが長く使われている」。小岩さんは自負する。

 法人は新型コロナウイルス禍で子ども食堂の配食事業に力を入れ、今は津波避難マップを作るため、住民と避難ルートを練っている。小岩さんは「時代や社会の流れに応じて活動を変化、進化させてきた。人に優しい地域をつくりたいという根っこは変えないで活動を続ける」と意気込む。

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