J2仙台は27日、U-17(17歳以下)ワールドカップ(W杯)で日本代表監督を務めた森山佳郎氏(56)の監督就任を発表した。トップチームを率いた経験はないが、育成年代の指導に定評がある。クラブとして、長期的な視点で生え抜きや若手を育てようとする戦略を鮮明にした。J1への即復帰を目指して失敗したここ2年から局面が変わり、チームは再建期に入る。
広島ユースでプレミア2連覇 育成実績は十分
森山氏は2002~12年に広島ユース監督を務め、時代をつくった。11、12年は高円宮杯U-18(18歳以下)プレミアリーグを2連覇。多くのトップ選手を輩出した。18年W杯代表のDF槙野、仙台が天皇杯全日本選手権で準優勝した18年に大黒柱だったMF野津田らが教え子だ。日本代表では今年のU-17アジアカップで2連覇に導いた。
仙台は21年シーズンJ119位でJ2降格が決まり、その後、毎年即戦力をそろえながら、昨季7位、今季16位と低迷が続く。著しく成長したと言える若手が見当たらない。今季は練習でまずまずのパフォーマンスを見せても出場機会が与えられないこともあり、育成の視点を欠いていた。
目先の結果を求め過ぎ、その副作用だけが残る悲惨な状況だ。現状で結果と育成の両方を追求するのは難しい。森山氏の招聘(しょうへい)は育成に軸足を置くというメッセージだろう。
2年連続でシーズン途中に監督が交代し、チームとしての積み上げができるわけがない。育成年代のスペシャリストも、トップチームでの手腕は未知数。将来を見据え、一定の我慢をする覚悟が必要かもしれない。
(佐藤夏樹)