次世代エネルギーとされる核融合発電の実用化に向けた日本政府と欧州連合(EU)の共同声明案が、判明した。発電時に二酸化炭素を排出しない脱炭素電源と位置づけ、日欧が共同運用する実験装置「JT―60SA」(茨城県那珂市)を活用した研究開発や人材育成を通じ、早期の実用化を目指すとした。
盛山文部科学相とEUの執行機関・欧州委員会のカドリ・シムソン委員(エネルギー担当)が1日午後に会談し、発表した。
核融合は、原子核同士の融合で膨大なエネルギーを生み出す。日米欧などは国際熱核融合実験炉(ITER)をフランスに建設中で、JT―60SAは、実験データの共有などでITERを支援するため、日欧が共同で建設。10月には、核融合反応を起こすための条件となる「プラズマ」の生成に初めて成功した。
共同声明案では、核融合発電は原子力発電所と異なり高レベル放射性廃棄物が発生しないとして、「エネルギー供給と環境問題に同時対処する次世代エネルギー源の一つ」と明記し、実用化の重要性を強調した。
さらに、JT―60SAによる研究成果を核融合炉の設計・建設に活用するため、日欧が連携することを確認。双方の若手研究者や技術者の訓練を強化し、将来の核融合技術を支える人材育成を進めるとした。
核融合を巡っては、米英が11月に協力協定に調印するなど、各国が独自に掲げる温室効果ガスの排出削減目標の達成や商業化に向け、国際連携を強化している。
日本政府は4月、核融合開発の国家戦略を策定し、文部科学省の検討会は2050年までに実用化する目標を掲げた。政府は日欧連携を強化することで民間も含めた国内の開発機運を高め、目標の達成につなげる。