忘年会シーズンを、新型コロナウイルスの「5類」移行後初めて迎えた。忘年会「復活元年」と期待される一方、未経験の若い社会人からは「大人数が苦手」「飲み会慣れしてない」と憂うつな声も少なくない。 【一覧】忘年会に尻込みする若者たちの声 「4年ぶりの忘年会、全員参加を」。一斉メールに広島市東区の女性(27)はどんよりした。2020年入社の「コロナど真ん中世代」。友人と飲むのは楽しいが、大勢に囲まれる社内行事は初めてで、ストレスを感じてしまう。 会場のホテルには100人近くが集う。コース料理で欠席は不可。座席表を見ると苦手な上司が近く、緊張して食事どころじゃない。一番気が重いのは「お酌」だ。「女性社員は全テーブルを回るのが慣例」と先輩から聞き、のけぞった。「昭和かと。高い会費と業務外の時間を費やし、気を使うって意味不明。残業代欲しいくらいです」 広島市中区の新入社員女性(22)は大学2年でコロナ禍に見舞われた。通った女子大ではカフェやランチで集まることはあっても、10人以上が参加する場や飲み会には行ったことがない。「瓶ビールのつぎ方や水割りの作り方が分からない」と不安がる。 大規模な忘年会が復活するという広島市西区の男性(29)の会社は「飲みニケーション」を重視する社風。新入社員が余興を披露する謎の決まりがあり、休日も同期とお笑い芸人の一発芸を練習した記憶がよみがえる。拘束時間も長い。酔った上司に3次会まで絡まれ、参加しない人の陰口を言う「欠席裁判」の雰囲気も嫌だった。コロナ禍では飲み会の同調圧力がなくて気楽だったのに…。 東京商工リサーチが10月、全国の4747社に実施した調査によると、忘年会・新年会を予定するのは54・4%。「コロナ禍前はしていたが今回は実施しない」と答えた企業は2割で「参加に抵抗感を示す従業員が増えたため」との理由が4割を占める。 若者にも賛成派はいる。広島市西区の女性(24)は「職場での交流に飢えていて純粋に参加してみたい」。福山市の男性(32)も「上司にいい印象を残せば査定で悪い評価を付けづらくなる」。なかなか打算的だ。 最近は「ソバーキュリアス」と呼ばれる、アルコールを飲まないライフスタイルも注目される。30代の営業職男性は幹事をする際、ノンアルメニューが充実した店を選ぶ。「ハラスメントが起きにくく若手も参加しやすいはず」と提案する。
専門家のアドバイス
「何のための会かを明確に」と強調するのは、広島市のキャリアコンサルタント藤岡佳子さん(41)。「親睦・慰労が目的なら参加者が気分よく過ごせる配慮が必要。説教や自慢話で部下を不快にさせる会なら開く意味がない」と指摘する。 ランチ会などの選択肢もあり得る。大切なのは「参加しない人を尊重すること。コロナ禍を経て集団が苦手な人も増え、『飲みに消極的』=『付き合いが悪い』との考えは改めるべきです」。藤岡さんのお薦めは90分の食事会。だらだら飲み続けず気軽に参加できそうだ。