EV工場、なぜタイで建設ラッシュ…政府が「アメとムチ」使い分けた産業政策

■政府誘致 日本勢は慎重

 東南アジア最大の自動車産業集積地のタイで、電気自動車(EV)工場の建設計画が相次いでいる。タイ政府のEV産業振興に向けた政策が背景にあり、中国や台湾、欧州メーカーが2024年以降の稼働開始を見込む。タイ自動車市場のシェア(占有率)が最大の日本メーカーは大型投資に慎重な姿勢だ。(バンコク支局 井戸田崇志)

 中国自動車大手の長安汽車は11月上旬、タイ中部ラヨーン県で、EVなどを生産する新工場の建設を始めた。投資額は88億バーツ(約370億円)で、25年の稼働開始を予定する。生産能力は年10万台だが、長安の現地子会社の沈興華社長は「タイでEV移行が加速している」として、将来的に倍増する方針を示す。【公式】 Lenovo ThinkPad E14 Gen 5 AMD

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 このほか中国EV大手BYDなど中国勢を中心に、台湾の鴻海精密工業、独BMWなどもEV工場建設に向けて動いている。

 EV工場の建設ラッシュの背景には、タイ政府の産業政策がある。

 政府と覚書を結んだメーカーには、輸入したEV1台あたり最大15万バーツ(約60万円)の補助金を支給するほか、物品税や関税を引き下げる。割安でEVを販売できるようにしてEV市場を創出すると同時に、25年末までにタイ国内で輸入台数以上のEV生産を義務付けた。達成できなければ補助金の返還を求める。

 こうした「アメとムチ」を使い分けた産業政策でタイをEVの生産・輸出拠点にしようとしている。

 政府と覚書を結んだメーカー9社のうち、販売面で圧倒するのがBYDだ。1~10月のEVの新規登録台数は2万台を超え、市場全体の約4割を占める。これに対し、トヨタ自動車の登録台数は70台に満たない。

 トヨタは、タイの新車市場のシェアはトップだが、現地法人の山下典昭社長はEVの現地生産に関して、「できるだけ早く量産し、提供したい」と述べるにとどめる。他社も具体的な計画は示しておらず、「既存工場をEV用に改造するのは新工場よりもコストがかかる。補助金がなくなればEVは売れず、リスクが高い」(自動車大手幹部)との声が多い。

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