仙台市青葉区の「仙台第一生命ビル」の建て替えは勾当台・定禅寺通エリアで、市の施策「せんだい都心再構築プロジェクト」の対象第1号となる見込みだ。市はにぎわい創出に向け、市役所新本庁舎建設、勾当台公園再整備、定禅寺通の歩道拡幅といった施策と同ビル再開発を連動させることが必要と判断。5年間の粘り強い働きかけが実を結んだ。(報道部・佐藤理史、田柳暁)
[せんだい都心再構築プロジェクト] 仙台市中心部の老朽化したビルの建て替えを促すため、市が2019年7月に発表。1フロア約660平方メートル以上の高機能オフィス整備を条件に容積率の緩和、固定資産税負担助成などの支援策を講じる。テナント退去への助成や環境配慮型グリーンビルディング整備への優遇策もある。30年度までの約10年間に総額約100億円の支援を見込む。
エリア初の「都心再構築プロジェクト」認定へ
郡和子市長は4日、まちづくりに関する第一生命保険との連携協定の締結式で「定禅寺通周辺が50~100年に1度というべき大きな変化の時期を迎えている。市にとって特別なエリアの魅力が一層向上する」と意義を強調した。
市が勾当台公園や定禅寺通周辺を重視するのは、商業施設の開業が続くJR仙台駅周辺に人の流れが集中し、回遊性に乏しい都心部の課題に直面するためだ。
市は2018年ごろから、第一生命にビルの建て替えが与える影響の大きさを繰り返し説いた。その思いに第一生命が呼応したのは22年夏ごろ。「まちづくりと相乗効果を生み出す建物を造りたい」。市の担当者に現地建て替えの意思を表明し、市と共同歩調を取る姿勢を示した。
両者は1年余りをかけ、街路や公園といった公共空間と、民有地のオープンスペースを一体的に捉える計画を練り上げた。
象徴的なのは、ビルの敷地を東側に約5メートル移す取り組み。勾当台公園との間にある歩行者専用の市道をビルの西側に付け替え、つなぎ横丁を拡幅する。歩行者天国とし、音楽ライブなどの会場にする構想を描く。
公園内の公衆トイレは新ビルに移設する。公園敷地の有効利用につながる提案を受け入れた第一生命に対し、市幹部は「ここまで協力してくれるとは思わなかった」と驚いた。
一方、建て替えの動きが周辺にどれだけ波及するかは未知数。市によると、定禅寺通エリアは築40年を超える建物が半数を占める。老朽化への対応は差し迫るが、別の市幹部は「比較的規模の小さいビルが多い。すぐ後に続くことにはならないだろう」と見通した。
「環境に優しいビルにしたい」 第一生命保険・隅野俊亮社長
仙台市と勾当台・定禅寺通エリアのまちづくりに関する協定を結んだ第一生命保険の隅野俊亮社長は4日の記者会見で、仙台第一生命ビルの建て替えについて「環境に優しいビルにしたい」と強調した。一問一答は以下の通り。
-どのような建て替えを目指すのか。
「オフィスビル1棟の建て替えという枠組みにとどまらず、周囲の街並みや交流、にぎわいを促進する空間づくりに一役買いたい。再生可能エネルギーの活用を含め(今以上に)環境に優しいビルにしたい」
-「黒ビル」の愛称で親しまれてきたが、建て替え後は外観が白くなる。
「現在のビルが完成した1970年当時は、黒いガラスの外観で革新性と高い格調を目指した。これからの街づくりを考えた時、空間としての色合いを踏まえて、このような(白い)外観に刷新した方が良いだろうと考えた。今後、『白ビル』と呼んでもらえるかどうかは市民からの評価次第だと思っている」
-昨年夏、建て替えに動き出した理由は。
「完成から50年余りを経て建て替えの必要性が出てきた。市が長年にわたりビル周辺の再開発を検討してきた経緯や、市民の新しい街の空間に対するニーズを踏まえ、総合的に判断して声をかけさせてもらった」