住宅メーカー大手のミサワホーム(東京)と子会社の東北ミサワホーム(仙台市)、宮城県多賀城市は4日、まちづくりに関する包括連携協定を結んだ。ミサワホームが取得した東北学院大工学部跡地で計画する再開発に関し、同社は2025年10月の造成工事着手を目指すと明らかにした。
協定によると、3者は(1)中心市街地の開発(2)生涯にわたる健康づくり(3)防災・減災対策-など9分野で連携する。
ミサワホームなどは跡地で一戸建て住宅や分譲マンション、商業施設、公園などの複合整備を予定している。市も総合体育館と市民プールを統合し、跡地に移転新築することを検討しており、市中心部の広大な一等地で官民連携による再開発が動き出すことになる。
市役所であった協定の締結式で、ミサワホームの佐藤徹常務執行役員は「市と連携し、地域の課題解決につながるまちづくりを推進したい」と語り、深谷晃祐市長は「幅広い分野で協力し、将来都市像『日々の喜びふくらむまち』の実現を目指したい」と話した。
一等地再開発へ高まる期待 商業施設誘致の実効性に懸念も
東北学院大多賀城キャンパス跡地の再開発を巡り、宮城県多賀城市と住宅メーカー大手ミサワホーム(東京)、子会社の東北ミサワホーム(仙台市)が包括連携協定を結び、計画実現へ向け一歩を踏み出した。2025年10月の造成工事着手を目指す中心市街地の再開発計画に、市民の期待と懸念が交錯する。
「多世代がここに住んで良かったと感じられる場所になってほしい」と深谷晃祐市長。JR多賀城駅から近く、市役所や文化施設が隣接する一等地の再開発に、活性化の期待を込める。
広大な11・4ヘクタールほどの対象地では、一戸建て住宅や分譲マンションに加え商業施設や飲食店、子育て支援施設、公園などの整備が予定され「元々周辺に住んでいる人たちへの渋滞対策といった配慮も考える必要がある」と話した。
市は老朽化が著しい総合体育館と市民プールの統合移転を検討している。
多賀城・七ケ浜商工会の安住政之会長は「体育館とプールの合築移転で、跡地を有効活用できるのはいい」と歓迎する一方、「商業施設を持ってくるのは人口規模的に難しいのではないか」との懸念も口にした。
「住民の生活利便性を高める」 ミサワホーム街づくり事業本部・安藤治郎氏に聞く
ミサワホームが進める東北学院大多賀城キャンパス跡地の大規模開発計画について、同社街づくり事業本部の安藤治郎開発業務室長(54)に現時点の構想を聞いた。(多賀城支局・浦響子)
-どういうまちづくりを目指すのか。
「一戸建て住宅や分譲マンション、商業施設、子育て支援施設、医療機能などを複合的に整備し、交流人口が増えて地域が輝き続けるようなまちづくりを実現したい。多賀城市の基本構想や政策的な考えも大切。地域課題解決に向けどういう機能が必要か、一緒に考えながら開発を進めたい」
「これだけの規模の中心市街地の一体開発は、全国的にも事例が少ない。千葉県浦安市や神戸市の新長田で進めている複合開発のノウハウを多賀城でも生かす」
-具体的に建設を予定する施設は。
「周辺地域の住民を含めたエリアの生活利便性を高めることが一番。スーパーやドラッグストアなどの買い物環境やレストラン、クリニックモールのような優先順位の高い機能は入れていきたい」
「高齢者が車を使わずに歩いて生活を完結できる環境も大事。子育て中のママが子どもと一緒にお茶して情報交換できる場が街中にあってもいい。行政や地域のニーズを調べたい」
-市は総合体育館と市民プールの合築移転を検討している。
「正式に話をいただければ、前向きに検討していきたい。地域の健康増進に寄与する施設で、中心市街地に欠かせない行政機能の一つになってくるだろう」
-イメージ図では、大きな公園も描かれている。
「みんなで遊ぶ広場や防災公園、地域の交流、イベント開催など、周辺の付加価値が上がるような場にしたい。交流人口が増えれば住みたいと思う人も増えるし、スパイラルアップ(好循環)していくような環境づくりをしていきたい」