スマートスピーカー活用、緊急時情報を迅速発信 岩手大がシステム開発中

 岩手大などが、人工知能(AI)で音声を認識するスマートスピーカーを使い、火災や災害など緊急時の情報を、メールや音声で迅速に伝えるシステムの開発を進めている。遠隔地で暮らす家族の災害対応や介護施設での見守りなどでの活用を想定し、実用化を目指す。(盛岡総局・横川琴実)

 研究しているのは、岩手大理工学系第一技術室の千葉寿室長(54)らのグループ。インターネット通販大手「アマゾン」のスマートスピーカー「アレクサ」を使い、火災報知機や防災ラジオが起動する際の信号をサーバーに自動的に伝送する装置を開発した。

 スマートフォンのアレクサの操作アプリで通知方法を設定すると、メールや無料通話アプリ「LINE」で連絡したり、情報が音声となってスピーカーから流れたりする。遠隔操作で電源を制御する「スマートプラグ」と振動発生機器と連携すれば、視覚障害者にも危険を伝えられるという。

 グループは岩手県矢巾町の消防団や火災報知機メーカー「ホーチキ」(東京)と協力し、3月から実証実験を進めている。火災警報器の起動を音声などで知らせる装置を約30世帯に配備し、誤作動の有無などを確認している。

 装置は水漏れ探知機など各種センサーとも接続でき、介護や医療分野での活用も期待できる。盛岡市の社会福祉法人と共同研究を始めており、施設入所者の徘徊(はいかい)を検知するマットが反応すると、アレクサから音声が流れる仕組みを整えた。異常がないのにナースコールが誤って押されるケースと区別がつき、職員からは「入所者の動きがよく分かる」と好評だ。

 防災ラジオの起動信号を検出すると、消えていたテレビの電源が自動的に入る装置の開発も進めている。千葉さんは「実証実験を重ねて改善を進めていく。家電メーカーやIT企業などと協力しながら実用化を目指したい」と意気込む。

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