奇祭「蘇民祭」来年2月で1000年超の歴史に幕 岩手・奥州、担い手不足で継続困難

岩手県奥州市水沢の黒石寺は5日、1000年以上続くとされる奇祭「蘇民祭」を来年2月17日の開催を最後に終了すると発表した。運営側の高齢化と担い手不足で祭りの維持が困難になったという。

 地元の保存協力会によると、運営を担う寺の檀家(だんか)は80代を中心に10人程度。厄を払うため男衆が火の粉を浴びる「柴燈木(ひたき)登り」に使う松の伐採や組み立てなど祭りの準備に1カ月ほどかかり、体力的に負担が大きくなった。

 夜通しで開催されてきたが、来年は午後6時~午後11時に短縮し、柴燈木登りは取りやめる。クライマックスの蘇民袋争奪戦は寺の敷地外の雪原で行わず、境内だけで決着を付ける。

 蘇民祭は岩手県内各地で無病息災を祈って開催される国の選択無形民俗文化財で、黒石寺の蘇民祭が代表格。全国から下帯姿の男衆100人超が集い、約3000人の見物客が訪れる。

 2021年以降は新型コロナウイルス禍で中止が続き、23年は厳寒の川で身を清める「夏参り」だけに縮小された。25年以降は旧正月行事として護摩祈とうのみを継続する。

 藤波大吾住職(41)は「祭りを楽しみにしている皆さまの期待を裏切る形で申し訳ない。開催直前の中止など迷惑をかける恐れもあり、祭り自体をやめる判断となった」と説明した。

 倉成淳奥州市長は「全国的な知名度と長い歴史を持つ祭りで廃止は大変残念だが、当事者の決定を重く受け止め尊重したい。祭りを守り、受け継いできた全ての方々に敬意を表する」との談話を出した。

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