富裕層が海外移住を選択する理由は無数にある。家族の問題、個人的な好み、政府による規制、治安、ビジネスチャンスなどさまざまなだ。米経済ニュースサイト「24/7WALL ST.」は今週、そんな億万長者たちが去った母国ワースト10を独自の調査・分析でランキングした。
10位 日本
米経済ニュースサイト「24/7WALL ST.」によると、生活費の高さや人口過密、高インフレ対策の新たな規制は全て大富豪の海外流出につながっているという。
同サイトは、東京など日本の大都市では住居費が世界でも最大級に高く、資産を保つため海外移住も当然と指摘。実際、政府は地方活性化のため、東京23区に在住や通勤する人の地方移住を経済的にサポートするため支援金を支給していると説明した。
加えて、金融政策による円の大幅な下落により、日本市場への投資を止め、日本を離れることを選択していると解説した。
9位 南アフリカ
2021年以来、南アフリカではあらゆる経済分野で富が大幅に失われた。多くの億万長者は財を失い、もしくは国を去った。にもかかわらず、2020年の「金融秘密指数」では依然として〝世界で最も安全なタックスヘイブン(租税回避地)〟にランクインしてる。
8位 メキシコ
同サイトによると、メキシコでは富裕層が非富裕層に比べ、117倍の速さで富を増やしているという。そんな中、2018年に誕生した左派政権は富裕層の納税回避や法律違反に対する取り締まりを強化。新法案では脱税を組織犯罪と同様の扱いをするとし、重大な脱税を国家安全保障の脅威とする新法も可決した。そのため、税金の抜け穴を利用したり、脱税に加担したり、将来の法制度を恐れる億万長者が海外移住している。
7位 韓国
アジアで最も成功した経済国の一つである韓国は、過去数十年で爆発的な成長を遂げた。多くの億万長者は生活費がより安い場所に自分の富を動かそうとし、韓国を離れている。韓国では資本の流動性が高く、海外移住はそれほど問題なくできるという。
6位 香港
世界の強国により、自分たちの国は存在しないとされた場合、自分の資産が安全と感じることは困難だ。中国政府がこの〝小国〟への支配を強めるにつれ、軍事衝突や、より厳格な規制や管理をおそれる億万長者は、中国人富豪たちが中国本土を離れるのと同じ理由で香港を離れている。
5位 ブラジル
この国の億万長者たちは、経済的、政治的不確実性や国内投資の信頼性の低さを理由にブラジルを離れている。予測不可能な政治的将来は、政府内にも経済紛争と激しい混乱招いている。汚職と犯罪は依然としてブラジル政府の悩みの種で、あらゆる経済改革に対する信頼を損なっている。
ブラジルの極端な所得格差は、政府がこの問題に取り組む動機となっているが、貪欲な富裕層にとってはさらに厳しい状況となっている。海外移住が可能な富裕層は、金融機関がより安定し、政治情勢がより信頼できる米国に移住している。
4位 ロシア
ロシアのウクライナ侵攻やその他の人道への犯罪に対し、西側はロシアに厳しい経済的、政治的制裁を課している。ロシアのオリガルヒ(新興財閥の超富裕層)〟の多くはこの制裁の対象となり、国外への脱出は不可能だ。彼らの資産は凍結され、西側との取引は停止されている。対象にならなかった富豪たちは密に国外へ脱出している。
3位 英国
大富豪たちの海外移住のきっかけは英国のEU離脱、つまり〝Brexit(ブリグジット)〟だった。成長を続ける億万長者にとって最も重要なことの一つは、政治的、経済的安定性と予測可能な将来だ。欧州連合ほど安定していて、強力で、予測可能であるものはなかった。ブリグジット前には億万長者が逆に英国に移住してきていた。だが、国民投票でEU離脱が決まった時、既存の法の多くが無効となり、対応の必要性が生じた。EU間での旅行、貿易、銀行取引などがはるかに困難になり、費用がかかるようになった。
2位 インド
インドを離れる億万長者にとって、その決断の大きな理由は、高額な税金や、海外送金や新規事業の開設めぐる複雑で入り組んだ法の壁や汚職などだ。さらに、治安や安全の問題、気候変動の影響なども理由に挙げられる。インドを出国した大富豪のほとんどは、富裕層に有利な条件がそろったオーストラリアに向かう。インドは人口が多いため、億万長者が海外に流出しても、毎年その数を埋めるだけの新たな億万長者が誕生している。
1位 中国
この10年で億万長者が大挙して中国を去り、コロナ禍によりその状況に拍車をかけた。中国の膨大な人口、権威主義的な政府、国家統制された〝資本主義〟を考えれば、驚くべきことではない。中国はほとんどの近隣諸国と国境や領有権をめぐる紛争を起こし、香港や台湾との政治的対立を抱え、米国とは経済的、覇権的な地位争いを続けている。これらすべてが組み合わさって、富に関する非常に厳格な法制度を取っている。
中国は今年、過去最大規模の大富豪の流出に直面することになりそうだ。「ゼロ・コロナ」政策が終わり、渡航制限が緩和される中、タックスヘイブンを求めて移住を熱望していた億万長者たちが大挙して逃亡している。その移住先はオーストラリアやシンガポール、アラブ首長国連邦、米国だ。大きな税の抜け穴、緩い金融規制、安定した市場が超富裕層を魅了している。