EV、次に来るのは「電池小型化」の波

電気自動車(EV)は高価で、しかも「航続距離不安」がある。遠くまで走れないのではないか、稼働中の充電器が見つからないのではないか、という懸念を購入希望者は抱く。

今年のEV販売台数は伸び悩んでいる。現在搭載する電池は、乗客を平均約200~400マイル(約320~640キロメートル)しか運べない。

だがEV購入者を増やす秘策の一つが、実は「航続距離を減らす」ことだったらどうか。

自動車メーカーはこれまで航続距離の長い大型車載電池を開発することで、航続距離の不安を解消しようとしてきた。だがそうした電池は充電時間が長く、重量があるうえ、製造コストが高い。

米新興EV企業ルーシッド・グループのピーター・ローリンソン最高経営責任者(CEO)は、1回の充電で500マイル以上走行できるEVを販売している。高級セダン型EV「ルーシッド・エア」は価格が約7万5000ドル(約1090万円)からだ。米環境保護局(EPA)によると、米国で入手可能なEVの中で最も航続距離が長い。

一方で、同社は効率性の高いモーターの開発にも取り組んでいる。1キロワット時当たりの走行距離がより長くなるようなモーターだ。それが実用化されれば、車載電池はより小型になり、EVが手頃な価格になるのに役立つだろう。

高速充電できる小型電池と、優れた充電インフラが実現すれば、将来はEVの航続距離が150マイル程度で済むかもしれない、とローリンソン氏は考えている。

現在、米国ではEVが自動車市場の9%程度にとどまる。今後数年で30%に到達するためには、どのようにEVを変えるべきか?

現時点でEVは同等のガソリン車よりも割高だ。EV製造の基本的コストに取り組む必要がある。そのためには製造コストの最も高価な項目、すなわちバッテリーパックが焦点になる。

バッテリーパックは2万ドルを優に超えることがある。しかも、それは自動車メーカーにとっての金額で、顧客が支払う金額ではない。

全てのEVが同じというわけではない、とあなたは言う。どういう意味か?

ガソリン車は環境にあまり良くない、EVは環境にかなり良いものだ、という共通認識がある。

だがEVにも電子をむさぼるものがある。排出量ゼロだからといって、全てのEVが等しく良いわけではない。私が重視するのはまさに効率性だ。つまり、所定のエネルギー量に対してEVがどれだけ遠くまで走れるか、すなわち1キロワット時当たりの効率性だ。

EVを購入しない理由の一つに、航続距離の不安を挙げているアンケートの回答が多い。もしEVの効率性に誰もが注目したら、未来はどうなるのだろう?

真に成熟した、強固で信頼性の高いインフラが整備された世界では、航続距離を電池という形で車内に積み込む必要性は低下する。

今から5、6年後、EVが150マイル以上の航続距離を必要としなくなる未来が見える。一晩で150マイル分をフル充電し、家を出る。オフィスに到着後、そこでプラグを差し込めばよい。

それは未来のクルマにつながる。もし1キロワット時当たり6マイル走れるとしたら、150を6で割ってみてほしい。素晴らしいではないか。現在のバッテリーパックの一部に比べて4分の1の大きさで済むのだから。

現在の「ルーシッド・エア」のパックであれば、重さは約660キロだ。それを4分の1にすると、大幅に軽量化される。約150キロの小さな物体ならば、フロントシートの下に十分収まるだろう。

実現すれば、そのこと自体が車の効率性を高め、本当の意味で手頃なEVにつながるだろう。

バッテリー小型化構想を実現するのに何が必要か?

私はエンジニアリング技術の競争だと考えている。それは小型化した電池でより遠くまで行くために必要なことだ。私はそれが商業やビジネスの役割だと思う。

一方、インフラについては、政府や政策の助けが少しは必要になる。

政策立案者が手厚い支援策を講じるべきだと私は思う。もしガレージ付きの家が持てない人々に税金が投じられるならば、それは素晴らしいことだ。

建物の外に駐車場があるマンションや集合住宅に住む人が一体どれだけいるのか。夜間充電施設は非常に重要だと思う。

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