ヨドバシ開業、高まる利便性 「仙台駅東口でほとんど済むようになった」

 3年余り社会を翻弄(ほんろう)し続けた新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行した2023年。行動制限がなくなり、県内各地の催事や観光地はにぎわいを取り戻し、仙台市中心部の新たな商業ビルには大勢の客が足を運ぶ。夏の記録的猛暑は農水産物や生活を脅かした。1年の出来事を現場の記者が振り返る。(15回続き)

開業とともに続々と入店する買い物客=6月2日午前9時30分、仙台市宮城野区のヨドバシカメラマルチメディア仙台

 新型コロナの5類移行から約1カ月がたった6月2日の早朝、強い雨にもかかわらず、仙台市宮城野区のJR仙台駅東口には600人を超える行列ができていた。コロナ下で大学生活の大半を過ごした記者1年目の自分にとって、想像を超える人出だった。

 家電量販店大手ヨドバシホールディングス(東京)が、駅東側に整備した複合商業ビル「ヨドバシ仙台第1ビル」の開業日。オープンと同時に店内になだれ込んだ来店者の中には、マスクなしの若者も目立ち、「アフターコロナ」を印象づける活況だった。

 8月には近くのヨドバシ仙台第2ビルに食品スーパー「ロピア仙台ヨドバシ店」がオープンし、集客力がさらに高まった。複合商業ビルの開業から半年が経過した今月上旬、買い物客に駅東口の印象を尋ねると、にぎわいや利便性の高まりを歓迎する声が相次いだ。

 宮城野区榴岡の無職田中徹さん(66)は「今までは仙台駅の西側まで買い物に行ったが、今は東口でほとんど済むようになった」と満足そう。ロピアを訪れた塩釜市の主婦山本久美子さん(62)は「商品数も多いし値段も安い。わざわざ来てみる価値はある」と仙台まで足を伸ばす理由を語った。再開発や大型店の集客効果を目の当たりにした。

大町ではフリマ、にぎわい生む

 一方、新たな人の流れを生み出すため、イベントなど地道な取り組みを続ける商店街を取材する機会もあり、多様なまちづくりの形を考えさせられた。

 青葉区大町2丁目で11月12日、店舗前の小さなスペースや駐車場など約100区画を活用したフリーマーケットが開かれた。地元の御譜代町商人組合が活性化や交流促進を目指し、初めて企画した。会場は多くの人でにぎわい、仙台駅東口とは別の種類の「熱気」を感じた。

 「人がいる、町が盛り上がっていると地道に発信し続けることこそが、新たな魅力につながる」。企画した事務局の高橋輝(あきら)さん(52)の言葉が印象に残った。地域の特色を生かした街づくりの大切さを改めて実感した。(報道部・根元優)

 [メ モ] ヨドバシ仙台第1ビルは地下1階、地上12階で延べ床面積約7万6500平方メートル。2~4階がヨドバシカメラマルチメディア仙台の売り場。1、6階には飲食店、5階に衣料品店などが入る。9~12階はオフィスフロア。1階に高速バスのターミナルも備えた。

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