同人印刷大手、コミケ前に「他社へ注文して」と異例の声明 社長に理由を直撃

同人誌印刷大手の栄光が12月12日、「他社に印刷を注文してほしい」という異例の声明を自社の公式Xを通じて発表した。 【画像】「他社で注文して」印刷会社の異例のお願いを見る 栄光は、同人誌を「12月合わせで『どこへ注文しようか』と複数の選択肢をお持ちの方は当社でない、もう一社へご注文いただけないでしょうか」と呼びかけ。 加えて「今週分は何とか凌げますが、コミケ合わせのほとんどを繰り越し、来週の入稿がこのままの勢いで“例年以上”に増え続けると危機的な状況に陥ります」と説明した。 年末に大型同人誌即売会・コミックマーケットを控える“書き入れ時”での異例の声明は、大きな反響を呼んでいる。ここまで逼迫する理由とは? 栄光の社長・岡田一さんに取材した。

同人誌の印刷会社として親しまれる栄光

栄光は1975年創立、広島県福山市にある印刷会社。同人誌印刷のほか、一般商業誌の印刷・製本なども手がけている。 コロナ禍、同人誌即売会の中止で印刷会社が苦境を強いられる中、自社の加工技術を結集した『栄光 特殊装丁本 2020』を発売。2時間も経たずに完売して話題を呼んだ。 同人誌のつくり手からも愛され、ここ数年注文も増えているという栄光が、なぜ「他社に注文してほしい」とお願いする事態になったのか。社長の岡田一さんは言う。 「12月17日に開催される即売会『Dozen Rose FES.2023』に向けて、当初の想定数を上回る注文が入りました。そこにコミケ分の注文が重なり、キャパシティをオーバーしてしまいました」

「Dozen Rose FES.」の新刊が想定の1.5倍に増加

「Dozen Rose FES.2023」とは、赤ブーブー通信社が主催する同人誌即売会。女性向けを中心に、投票によって決められた複数のカップリング(キャラクター同士の関係性、カプ/CPとも)オンリーの同人誌が集結するイベントだ。 東京ビッグサイトの西1~4ホール、南1~4ホール、東4ホールを使用。サークルスペースはおよそ1万3000。 1日あたりのスペースでは、夏に開催された「コミックマーケット102」の1万500サークルを上回り(「コミックマーケット103」とは同程度)、近年大きな盛り上がりを見せる即売会のひとつだ。 サークル参加者の創作意欲や熱量は数字にも現れている。岡田社長によれば、今回の“想定外”の状況に至った理由だという。 「11月に、同じく赤ブーブー通信社さん主催の『COMIC CITY SPARK 18』がありました。『Dozen Rose FES.2023』も規模は同程度。でも、新刊の注文数では、『COMIC CITY SPARK 18』が1400件なのに対し、『Dozen Rose FES.2023』は2200件と、1.5倍の差があったんです」

キャパオーバーの状態でコミケ同人誌の時期に突入

栄光では、当初の見積もりを大きく超えた状況で、12月30日(土)・31日(日)開催の「コミックマーケット103」で頒布される同人誌の作業へ突入。 結果的に、新たな注文を控えてほしいという異例の声明を出さざるを得なくなった。 「これまでも、通常より少々多い程度は対応してきましたが、今回は本当に“しゃれにならない”くらいの量で、対応力の限界を超えてしまいました」 キャパオーバーを発表したのは栄光だけではない。岡山県にある同人誌印刷会社・ブロスも、12月12日にXを更新。例年を大きく上回る発注によって、「弊社の受注余力の限界に達する見込み」と報告した。 特定のイベントを指していないものの、「2023年12月17日~2024年1月7日合わせでご入稿予定のお客様へ」と題しており、「Dozen Rose FES.2023」や、2024年1月7日に大阪で開催される「COMIC CITY 大阪 125」を見越したアナウンスとみられる。 栄光は今回「心配をおかけして申し訳ございません」と公式Xで謝罪。岡田社長は、「来年は、入稿の締め切り自体を早めに設定するなど対策を検討します。また、Xだけではなく、今後ブログでも説明させていただく予定です」とコメントした。

タイトルとURLをコピーしました