日本企業に今後の有望な海外の進出先を尋ねた調査がまとまり、インドが2年連続で首位となりました。一方、中国は去年の2位から3位に順位を下げ、回答した企業の割合が1992年の調査開始以来、最も低くなりました。
この調査はJBIC=国際協力銀行が、海外に進出している日本の製造業の企業を対象に毎年行っていて、ことしは534社から回答がありました。
この中で今後3年ほどの有望な海外の進出先を複数回答で尋ねたところ、首位となったのは「インド」で、回答の割合は48.6%でした。
首位となったのは2年連続で、インドを選んだ企業のうち、すでに新規の事業や追加投資の計画があると回答した企業の割合も45.8%と、この項目の調査を始めた2003年以来、最も高くなりました。
理由として最も多かったのが「市場の成長性」で、自動車や化学などの業種が目立ちました。
インドはインフラや法整備の課題が指摘される一方、国連の推計値では人口が中国を抜いて世界一となっていて、巨大市場への日本企業の関心が高まっていることがうかがえます。
また、2位がベトナムで30.1%、3位が中国で28.4%でした。
中国は去年の2位から順位を下げ、有望な進出先と回答した企業の割合が1992年の調査開始以来、最も低くなりました。
理由としては、米中対立を背景にした経済安全保障の強化や中国経済の減速などが挙げられたということです。
インドに進出の食品メーカー 今後の市場拡大を見込み
企業の中には今後も市場の拡大が見込まれるとしてインドに進出するケースが相次いでいます。
大手食品メーカーの「キッコーマン」は、インドで主力商品の1つであるしょうゆの販売を進めるため、おととし、現地に販売会社を設立しました。
会社では、国内では人口の減少などで販売を伸ばすことが難しくなっているとして、新たな需要を獲得しようと、アメリカやカナダなどの北米をはじめ、ヨーロッパなどでの販売に力を入れてきました。
その結果、昨年度の事業利益587億円のうち、海外事業が8割余りを占めています。
こうした中、会社が注目したのはインドです。
今後、市場のさらなる拡大が見込まれ、大きなチャンスがあるとして、現地への進出を決めました。
日本国内の工場で製造されたしょうゆがインドに輸出されていて、味などは日本で流通しているものと同じです。
会社によりますと、インドではインド人の好みに合わせてアレンジされた「インド中華」と呼ばれる料理が家庭の味として定着していて、これに使う調味料としてしょうゆが受け入れられる可能性があると考えています。
インドに設立した販売会社では、しょうゆを使った「インド中華」などのレシピをSNSで発信したりしょうゆをPRするイベントを開催したりしていて、現地の人からの反応もよく、手応えを感じているということです。
会社では、インドでのしょうゆの販売事業を軌道に乗せて、2029年までに売り上げが毎年10%以上伸びる状況にしていきたいとしています。
茂木修国際事業本部長は「インドでいま、商品、そしてブランドをしっかりと定着させることができれば、今後、何十年もその強さを生かすことができると思う。インドは中東やアフリカと一つの経済圏として捉えることができ、その核になってくる国だと考えていて、非常に魅力的な国だ」と話しています。
調査結果について 国際協力銀行の調査部長に聞く
海外進出先の調査結果について、国際協力銀行の川上直調査部長に聞きました。
Q.インドが2年連続で首位になった理由は。
A.インドは中国を抜いて世界最大の人口を抱える国になったが、今後も人口が増え続ける国なので、内需拡大の余力がまだまだあり、日本企業の期待が非常に高まっている。インフラ整備も国を挙げて計画を作って強力に推進しているため、日本企業にとってもビジネスがやりやすい環境になりつつある。
Q.日本企業がインドでビジネスを拡大する上での課題は。
A.インドは人と人との関係や人脈をあてにしてビジネスを展開する商慣習がある。ことばの壁もあり、日本企業はこれまで苦戦を強いられてきた。こういった問題は引き続きあると思うが、これから日本企業がインドで成功していくためには、現地の有能な人材を欧米企業との競争の中で確保していけるかが大きなカギになる。
Q.中国が順位を下げ、回答した企業の割合が1992年の調査開始以来、最も低くなった背景に、何があるのか。
A.日本企業にとって中国市場は引き続き重要だが、米中の対立が長期化し、中国経済そのものも減速しはじめている。ビジネスに対する規制が強化されているので、さまざまな要因に対して、日本企業の懸念が大きく広がっていることが、中国を有望な進出先と回答する企業の大幅な減少につながっている。“脱中国”というのが少しはっきりとした形になって、結果に出てきている。