「落とし穴」とは書いたが、別に意図された落とし穴でもなんでもなく、ドライバー自身が「知らないだけ」という交通ルールは意外と多い。そこで今回は、「え? これも違反だったの?」という交通ルール違反を取りあげる。
文/今坂純也(DIRT SKIP)、写真/写真AC、愛知県警察
【画像ギャラリー】知らなかったじゃすまされない!! 交通ルールを再チェック(11枚)
■違反になるかならないかは道路交通法を読めばわかる
道路交通法とは、道路における危険を防止し、その他、交通の安全と円滑を図ることを目的に定められた法律。車両の運転者や歩行者が道路で守るべきルールを定め、主として交通安全のための各種のしくみを定めている。
交通ルールに違反しているかどうかは、この道路交通法に照らし合わせてみればわかる。
この交通ルール違反に関して、「ルール違反しただけ」と軽視しているドライバーもいるかもしれないが、れっきとした法律違反であり、罰則も規定されている犯罪行為であることは頭に入れておきたい。
以降は道路交通法違反となりうる、筆者が見かけた・経験したことのある事例をあげていく。
■赤信号で止まったとき、車外に出てドライバー交代
「えっ、違法なの!??」捕まってびっくり!! 落とし穴的交通ルール、要確認です!© ベストカー 提供
交差点や横断歩道付近は駐停車禁止区域が多数なので注意しよう(出典:愛知県警察 図1「主な駐停車禁止場所の例」)
一般道で眠気を感じた場合などに同乗者に運転を変わってもらった経験のある人はいるだろう。だが、ドライバーがクルマを降りた状態は“停止”にあたり、交差点でこの行為を行えばクルマの位置によっては駐停車禁止の場所で停車したことになり違反となる。
駐停車禁止の場所は以下のように決められている。
1.交差点、横断歩道、自転車横断帯、踏切、軌道敷内、坂の頂上付近、勾配の急な坂またはトンネル
2.交差点の側端または道路の曲がり角から5m以内の部分
3.横断歩道又は自転車横断帯の前後の側端からそれぞれ前後に5m以内の部分
4.安全地帯が設けられている道路の当該安全地帯の左側の部分及び当該部分の前後の側端からそれぞれ前後に10m以内の部分
5.乗合自動車の停留所またはトロリーバスもしくは路面電車の停留場を表示する標示柱または標示板が設けられている位置から10m以内の部分(当該停留所または停留場にかかる運行系統に属する乗合自動車、トロリーバスまたは路面電車の運行時間中に限る)
6.踏切の前後の側端からそれぞれ前後に10m以内の部分
また、道路上でドライバー交代を行うと、すり抜けによって追い抜きをしてきた後続の自転車やオートバイと接触したりする可能性もあり、事故を誘発する場合もあることを頭に入れておきたい。
■愛犬を膝上に乗せて運転
以前、走行中のクルマの運転席の窓から子犬が顔を出しているのを見かけたことがある。可愛い子犬の仕草に思わず顔がほころんでしまったが、実はこれも違反。
ペットを膝の上に乗せて運転する行為は、ドライバーの視界を妨げ、ハンドルもしくはその他の装置の操作を妨げることにつながり、乗車積載方法違反となる。
ペットを助手席の同乗者が抱えた状態では違反にならないが、エアバッグは成人体型を想定して作られており、衝突時に助手席側エアバッグが作動してペットに接触した場合、愛するペットは衝撃に耐えられず、骨折や窒息する可能性もある。
エアバッグに接触しなくても、フロントウィンドウに叩きつけられて車外に……という悲しい事態とならないよう、ペットはケージなどに入れて後部座席やラゲッジスペースに固定するほうがいいだろう。
■エンジンを切らずにコンビニで買い物
「えっ、違法なの!??」捕まってびっくり!! 落とし穴的交通ルール、要確認です!© ベストカー 提供
エンジンかけっぱなし……なんてクルマをよく見かけるコンビニの駐車場。これは道交法違反。どんな短時間でもNGだ。もちろん、環境に悪いだけではなく、近隣住民への迷惑にもなる
この夏は暑かった! そんななか、愛車のエンジンを切らずにコンビニで買い物をするドライバーを何度か見かけた。
実はこれも違反なのだ。
道路交通法第71条には「車両等を離れるときは、その原動機を止め、完全にブレーキをかける等当該車両等が停止の状態を保つため必要な措置を講ずること」とある。
また、エンジンを停止させていても、キーを車内に置いておく行為も違反。
同じく道路交通法第71条では「自動車又は原動機付自転車を離れるときは、その車両の装置に応じ、その車両が他人に無断で運転されることがないようにするため必要な措置を講ずること」となっている。
■原付を追い越すために、黄色のセンターラインをはみ出した
「えっ、違法なの!??」捕まってびっくり!! 落とし穴的交通ルール、要確認です!© ベストカー 提供
原付の法定速度は30km/hということで、1本道で出遭ってしまったらつい抜きたくなるが……。センターラインをはみ出しての追い越しは、白色の破線(必要な際は、はみ出しOK)の場合はOK。黄色の実線(追い越しのためのはみ出し禁止)の場合は違反。白色の実線(いかなる場合もはみ出し禁止)ははみ出さなければ追い越し可(xiaosan@Adobe Stock)
原付(原動機付自転車)の法定速度は30km/h、クルマは60km/h。
黄色のセンターラインが引いてある片側1車線の田舎道を走っていたら、前方に30km/hで道路の真ん中あたりを走る原付に追いつく……こんな経験は誰しもあるだろう。まさにそんなシチュエーションで起こりうる事態。
追い越しを禁止する場所として、道路交通法第30条には「車両は、道路標識等により追い越しが禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、他の車両(軽車両を除く)を追い越すため、進路を変更し、又は前車の側方を通過してはならない。」とある。
黄色のセンターラインは、「追い越しのための右側部分へのはみ出し通行禁止」を示しているので、今回の行為は「はみ出し追い越し禁止」の違反。
■黄色以外に白色実線もダメ⁉️
ちなみに、片側6m以上の道路に引かれる白色の実線のセンターラインは、原則としてその右側へはみ出して通行することはできないため、追い越し時にはみ出せばこちらも違反である。
今回の場合、黄色のセンターラインの他に標識で「追越し禁止」の規制がなければ、黄色のセンターラインからはみ出さず、かつ追い越される車両と安全な間隔を空けられる場合の追い越しであれば違反とならない。
ただし、黄色のセンターラインからはみ出さないようにと、原付とギリギリの間隔しかないのに追い越していくのは事故の原因にもなりかねないので絶対にやめてほしい。
■日差しが強いので、助手席側サイドウィンドウにタオルを挟んで日よけに
こちらもこの夏に見た覚えがある。暑い夏だったのでタオルを挟みたい気持ちもわからないでもないが、これも違反となる。
道路交通法第55条に「車両の運転者は、運転者の視野若しくはハンドルその他の装置の操作を妨げ、後写鏡の効用を失わせ、車両の安定を害し、又は外部から当該車両の方向指示器、車両の番号標、制動灯、尾灯若しくは後部反射器を確認することができないこととなるような乗車をさせ、又は積載をして車両を運転してはならない。」とあり、助手席のサイドウィンドウにタオルを挟むとサイドミラーが見えず視界が遮られる可能性があるからだ。
タオルはもちろん、カーテンやサンシェードもアウト!
助手席の同乗者がやりがちなので、気づいたら違反であることを教えてあげてほしい。
とまあ、「よく見るけどなぁ……」という例をあげたが、「いちいち細かいな!」と思う人もいるかもしれない。だが、そもそも道路交通法は何のためにあるのか? を考えたい。
冒頭で「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図ることを目的」と書いたが、すべてはドライバーや同乗者、周りの歩行者、他車両の安全や円滑な交通を考えて作られているもの。
なので、道路交通法に示されていないからといって「この方法だったらギリいいだろ?」と、確実に安全と言い切れないことはやらないほうがいいと思うのだ。
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