一定期間が過ぎて貯金者の権利が消えた郵便貯金が急増している問題で、来年から適用する返金(払い戻し)対応の新基準の内容がわかった。子や孫の名義で作った貯金の一部を新たに救済するものの、本人名義の貯金は対応が変わらず救われない恐れがある。
民営化前の貯金を管理する郵政管理・支援機構は20日に新基準を公表し、来年1月4日から郵便局窓口などで運用を始める方針だ。
いまは、消滅前の2カ月の天災や事故など「真にやむを得ない事情」があったと証明しないと貯金は返されない。返金に応じる割合は2017年の6割超から近年は2割前後に低下。民間銀行とは異なる特殊な制度で、基準や審査が不透明だと批判が出ていた。
朝日新聞が入手した機構の内部資料によると、新基準でも「真にやむを得ない事情」との条件を残す。ただ、申告内容が真実だと顧客に宣誓させ、証明書類の提出は省く。
救済対象が広がるのは、貯金の名義人が貯金の存在を最近まで知らなかったケースだ。「親が子ども名義の貯金をつくり、子どもに知らせていなかった場合」などが当てはまる。
いまは、貯金の消滅時点で「誰も貯金を知らなかった場合」などに絞って貯金を返している。今後は親が健在でも返金される可能性がある。
ただ、新基準の大部分は従来と変わらない表現だ。
「催告書の存在や内容を認識していなかった」場合も払い戻すと強調するが、貯金の窓口に転居を知らせなかった「やむを得ない事情」があることが前提条件で、いまの基準とほぼ同じだ。