人気ゲーム『Marvel’s Spider-Man』シリーズを開発したソニー子会社Insomniac(インソムニアック)のシステムに侵入したと主張するハッカー集団が、盗み出した大量のデータを公開した。同社が開発中の『Wolverine』や『X-Men』といった期待作に関する情報など、今後10年間の詳細なリリース計画が含まれている。 サイバー・デイリーによると、ランサムウエア集団「Rhysida」は先週、インソムニアックに対するハッキングに成功したと主張し、盗み出したデータと引き換えの「身代金」として、7日以内に約200万ドル(約2億9000万円)を支払うようソニーに要求。この期限が過ぎた直後、130万件以上のファイルを含む1.67テラバイトのデータをインターネット上に公開した。 流出したデータには、従業員の個人情報、社内メール、『Wolverine』の詳細な情報などが含まれている。SNS上には同作の映像や、ストーリーの詳細、ゲームデザインなどが出回った。 さらに、今後10年間の開発予算や、2033年末までに発売する予定の新作ゲームのリスト(うち多くは未発表タイトル)なども流出データに含まれている。それによると、『Wolverine』は「X-Men」関連3部作の第1弾で、第2弾の『X-Men』は2030年、タイトル未定の第3弾は2031~32年にリリース予定。 さらに、2025年には『Spider-Man 2』に登場するキャラクター「ヴェノム」を題材にしたゲーム、2028年に『Spider-Man 3』、2029年に『ラチェット&クランク』新作を発売する予定だという。 フォーブスはソニーにコメントを求めたが、今のところ返答はない。同社は以前、今回のハッキングについて認識しており、調査中だと説明していた。 インソムニアックは、『Marvel’s Spider-Man』や、最近リリースされた続編『Marvel’s Spider-Man 2』などのPlayStation独占タイトルで成功を収めている。 データを公開したランサムウエア集団「Rhysida」は11月下旬、大英図書館のシステムにも侵入したと主張していた。その手口は、組織や企業を狙うランサムウエア攻撃としては一般的なもので、コンピューターを悪意のあるソフトウエアに感染させ、保存されているファイルをロックした上で、ロック解除と引き換えに身代金を要求するというものだ。身代金は通常、追跡が困難な暗号資産(仮想通貨)で要求される。 ゲーム企業は、大規模なユーザーベースや個人データの収集、経済的影響力から、ハッカーにとって魅力的な標的となる。これまでにも、大手ゲーム企業からの大規模なデータ流出が相次いできた。昨年には、ロックスター・ゲームスが開発中の超期待作『Grand Theft Auto VI』(GTA6)の映像が盗まれ、ネット上で公開されるというゲーム史上最大級のデータ流出事件が発生。今月上旬には、ついに同作初のトレーラーがロックスターによって公開された。 2020年には、ソニー傘下のゲーム開発企業Naughty Dog(ノーティードッグ)がハッキング被害に遭い、発売前だった『The Last of Us Part II』の情報が流出。『サイバーパンク2077』や『ウィッチャー3』を手掛けたCD PROJEKT REDや、『リーグ・オブ・レジェンド』や『VALORANT』を手掛けたRiot Games(ライアットゲームズ)なども近年、ハッキングに遭っている。