敬老乗車証負担引き上げ、仙台市民の賛否は? 世代間で「温度差」が見え隠れ

70歳以上の仙台市民が低額で市地下鉄や市バスを利用できる敬老乗車証制度で、来年10月にも利用者負担を引き上げる市の方針を巡り、市民の反応が分かれている。市内7カ所であった説明会は反対一色だった一方、実施中のパブリックコメント(意見公募)は賛否が拮抗(きっこう)している。市は制度変更に理解を求めるが、反発が強まることも予想され、議論が順調に進むかどうかは見通せない。(報道部・竹端集)

 [仙台市の敬老乗車証制度] 1973年に市が独自に始めた。70歳以上の希望者にICカードの敬老乗車証が交付される。100円を入金すると1000円分利用できる。2012年に現在の自己負担10%、年間上限額12万円となった。市は現行の水準を維持した場合、25年後の48年度の事業費は39億600万円と推計。市の専門分科会が23年10月、市の引き上げ方針を了承し、市は11月の分科会で「25%が最適」とする案を示した。来年の市議会2月定例会に関連条例改正案を提出する。

説明会は「反対一色」、参加者の多くは利用者

 「絶対反対。理解できない」「外出を控えることにつながれば本末転倒だ」

 市が11月29日~今月9日に開いた7回の説明会は計89人が参加した。取材した4回で市に寄せられた主な意見は表の通り。出席者は利用者が大半で、市の担当者に厳しい意見をぶつける場面が目立った。

 泉区の無職芳賀芳昭さん(81)は市シルバーセンター(青葉区)であった最終回に出席。「市民サービスの後退を性急に進めようとしている」と不満をあらわにした。

 市が市社会福祉審議会の専門分科会に利用者負担を10%から25%に引き上げる方針を示した11月15日以降、反対の動きが表面化した。年金受給者らでつくる市民団体などは同28日、負担割合の現行維持を市に要請。今月5日には引き上げに反対する共産党市議団が勉強会を開いた。

子育て世代からは市方針に賛同の声も

 一方で、26日に締め切りが迫る意見公募は様相がやや異なる。市高齢企画課によると、意見は20日時点で200件を超え、引き上げの賛否は「差がない」。子育て世代の声も寄せられ、引き上げに賛同する意見も少なくないという。

 市が昨年実施したアンケートの結果はグラフの通り。20~59歳の29・8%が「(利用者負担は)今より重くてもよい」と回答した。60歳以上(10・8%)の3倍で、意見公募と同様に世代間の温度差が見え隠れする。

 市は負担割合の引き上げで「制度の持続可能性」の視点を重視。高齢化が進み、事業費の9割を占める一般財源支出額は2019年度に過去最高の26億6300万円に達した。市高齢企画課の担当者は「他の事業費を圧迫しかねない状況だ」と危機感を募らせる。

 制度は「高齢者の社会参加促進と健康増進」を掲げて始まった。現在はその理念と実態にずれがある。

 昨年のアンケートで尋ねた利用目的(複数回答)は「買い物」(69%)「通院」(56%)が上位を占め、「趣味・娯楽」(42%)「交流」(24%)「地域活動・ボランティア」(7%)を上回った。

 郊外を中心に、公共交通への不満もくすぶる。市は引き上げと並行した利便性向上策に、市地下鉄の主要駅9カ所にICカードへ入金できるチャージ機の新設を挙げるが、説明会で相次いだのは「市バスの増便」「JR線の敬老乗車証利用」といった要望だった。

 郡和子市長は5日の定例記者会見で「高齢者は不安だろうが、制度を末永く利用してもらうために見直しはやむを得ない」と、制度変更の必要性を訴えた。

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