EV蓄電池製造、補助金で中小連携アシスト…供給網強化し生産基盤の強化も促す

政府は今年度内に、電気自動車(EV)などで使われる蓄電池の製造装置メーカーに対する補助金を新設する方針を固めた。メーカーの多くが中小企業であることから、複数社による連携体制(アライアンス)を作ることを条件とすることで、国内サプライチェーン(供給網)の強化を促す。

 経済安全保障推進法に基づく安定供給確保の取り組み方針を改定し、新たに製造装置向けの設備投資を補助の対象に加える。2023年度補正予算で確保した2658億円の一部を補助に充てる。

 具体的には、蓄電池の基幹部品であるセルの組み立て・検査工程や、電極の材料を塗布する工程で使われる装置のメーカーなどを対象とする。設備投資に加え、脱炭素化やデジタル化、製造基盤の強化につながる技術開発も補助する。

 日本の製造装置メーカーは中小企業が約9割を占める。それぞれが高い技術力を有しているが、投資余力が乏しい。新たな補助金で生産基盤の強化を促す。

 支給の条件として、複数のメーカーによるアライアンスを作ることを求める。商社など窓口となる取りまとめ企業を決め、蓄電池メーカーが複数の製造装置を一括して発注できるようにして、利便性を高める。受注側としても、装置の設計や仕様のすり合わせにかかる時間やコストを減らせるメリットがある。

 技術流出を防ぐ観点から、重要技術にアクセスできる人材を限定するほか、外国への技術移転対策を取っているかどうかも考慮する。再雇用を含めた技術者の待遇改善も求める方向だ。

 蓄電池市場は中韓勢に席巻されており、製造装置の分野も両国に押されている。今後、日本でもEV生産の本格化が見込まれており、自動車メーカーによる蓄電池の「奪い合い」が予想されている。政府は30年までに蓄電池の年間国内製造能力を20年の約7倍となる150ギガ・ワット時に高めることを目指している。製造装置メーカーの基盤強化が遅れて生産が滞れば、日本の蓄電池メーカーも中韓製の製造装置を使わざるを得なくなり、技術が流出する懸念がある。

 政府は、蓄電池以外にも、先端電子部品や工作機械・産業用ロボット、航空機部品などを対象に、技術流出対策といった補助要件を追加で求める方針だ。

タイトルとURLをコピーしました