イワシやサバなど、全国で魚の大量漂着が相次いでいる。
三重県志摩市の漁港では14日、30トン以上のニシンの仲間である“カタボシイワシ”の死骸が浮いているのが発見された。また、北海道・江差町の漁港にも約1トンのイワシが打ち上げられていた。
北海道では7日にも、函館市の海岸に大量のイワシが打ち上げられているのが確認されているが、日本の海に今何が起きているのか。
北海道大学・海洋生物科学科の山村織生准教授に話を聞いた。
捕食者に追われ“酸欠”に
ーー日本の海に変化が起きている?
何か同時多発的な大変なことが起こっているというよりは、あくまでもローカルな出来事だという印象を持っています。
昨年の夏は、北海道で珍しく太平洋沿岸のかなりの広範囲で赤潮が起きて、数10億円という被害をもたらしましたが、今回の一連の大量漂着はもう少し局地的な現象だと思います。
はっきりとした理由はわかりませんが、消去法で考えていくと、おそらく魚など何らかの捕食者に追われて、密度が上がり過ぎた結果、酸欠になって死んだのかなと考えます。
今年初めにも北海道で漂着がありましたが、その時は水温が下がってきて、もともと温かい水に住んでいるイワシが取り残されてしまいました。
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しかし、今回の函館の水温は14~15度でイワシには丁度良い温度なので、捕食者との関連で起こったと考えます。
よって、日本の海に何か大きな変化が起きているというよりは、小さな出来事が各地で起きているという印象を持っています。
“低酸素”状態に弱いイワシ
しかしなぜイワシの漂着ばかりが目立つのか。
その理由として、イワシの特徴が挙げられると山村准教授は指摘する。
ーーなぜイワシの漂着が多い?
イワシは沿岸性の魚で、特徴の1つとして、低酸素への耐性が弱いことが挙げられます。
他の魚はまだ生きられる状況でも、イワシは酸欠状態に陥りやすく、動けなくなってしまいます。
また、酸欠のほかにも、これから冬に向かって水温が下がってくると、冷たい水に取り残された大量のイワシが流れ着くといった出来事も起こり得ます。
近年のイワシの資源状態は、日本海も太平洋も非常に良いです。
たくさんいるので、こうした現象は起こりやすく、目に付きやすくなります。
温暖化の影響とは言えない
各地で被害が相次ぐ中、三重の波切漁港では、漁師らが死骸の回収作業に追われ、最盛期の伊勢えび漁で1日数百万円もの損失が出ているという。
ーーイワシの捕食者は?
近年だとブリが全国的に増えていて、群れで捕食するため、こうした魚に取り巻かれたのかなと思います。
また、函館の津軽海峡にはクロマグロやイルカもいて、どちらも集団で狩りをするのでイワシが追い込まれた可能性があります。
ーー波切漁港では過去20年間で初めてとのことだが温暖化の影響は?
4~5年前に函館周辺でイワシの大量変死がありました。
それは港の中に入り込んだイワシが、暑い日が続いて水温が上がった結果、貧酸素状態になり死んでしまったのです。
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今年の夏のように暑い日が続くとそうしたことも考えられますが、長期的なトレンドとしての温暖化はもっと細かいスケールで起きているので、単純に温暖化によってこうしたことが起きているとは言えないと思います。
ーー12月に魚が打ち上げられるのは珍しくない?
今回のように重機を使って死骸を撤去しなくてはいけない程の規模は珍しいと思いますが、ある程度まとまった魚が漂着するのはそれほど大騒ぎすることではないです。
魚が大量死するとまず海水温を疑いますが、北海道も三重も程良い水温だったことが確認できているので、捕食者に囲まれるなど何らかの理由で魚の密度が上がり過ぎて酸欠に陥ったと考えるのが自然だと考えます。