「新札が出るとパチンコ屋が潰れる」業界の裏事情。24年は大量閉店ラッシュか

◆2024年、新札登場がパチンコ業界に及ぼす影響
 2024年に予定されている新紙幣の発行。福沢諭吉が渋沢栄一に変わり、きっとしばらくは違和感だらけになるかと思います。新紙幣への変更はこれまでにも定期的に行われていて、実は福沢諭吉も大幅な刷新ではないものの、2004年に若干変更されていたりしまして、1986年まで発行されていた聖徳太子が諭吉になった時には、やっぱりなかなか慣れなかった記憶があります。

 それは筆者がちょうど20歳になったタイミング、成人した後も貧乏暮らしは相変わらずで、5千円札にも使われていた聖徳太子ほど諭吉と触れ合う機会はありませんでしたけど……。

◆新札に対応する紙幣識別装置の交換が必要

 ところでパチンコ業界的では、新札が発行されたらまた休廃業するホールが増えるというのが通説になっているようです。そのワケは玉やメダルの貸し出しに使われているサンドの中にあります。サンドには紙幣識別装置、通称ビルバリ(ビルバリデーターの略)が搭載されているのですが、新札が登場するとこのビルバリの交換が必要になるのです。

 交換に必要な金額はメーカーによって異なりますが、関係者から聞いた話を平均すると1台あたり2万円くらい。これに台数分をかけると、500台程度の中規模点でも軽く1千万円を超える経費が必要になります。

 ホールにとってこれくらいの金額は大したことがない、なんて思われる人もいるでしょう。実際、ここ数か月の新台入替ラッシュを見ていると、50万円もするような新台を何十台(=数千万円)も導入していますし、それが数週間で閑古鳥が鳴くような稼働になっても平気で営業を続けています。

◆パチンコ業界は大損を喰らっても大丈夫……なのか?

 中古で売却するにも数週間で価値は10分の1以下。それだけ大損を喰らっても大丈夫なんだから、新札対応くらいは平気に見えます。

 でもその損失はじわじわとホールの体力を削ぎ、倒産が大きく報じられたガイアの場合でも新台の積極的導入がその要因になったと報じられています。

 また、安価で入手できる中古機で入れ替えして新台経費を数十万円程度で収めているような弱小ホールにとっては、直接お金を生まないビルバリ交換のために数百万円なんていうお金はそうそう簡単に用意できるものではありません。

◆2024年7月は紙幣識別装置の交換ができず倒産ラッシュか

 そんなホールに「新札が出たらどうするんですか?」と質問したら、「ビルバリの交換がいつできるのか分からないから、それまでは新札(渋沢栄一)を店員が旧札(福沢諭吉)に手作業で両替して対応する予定」とのこと。そんなホールは稼働も推して知るべしですから、それでいいかもですけど、当面はビルバリの交換予算を稼ぐことが営業の目的になってしまいます。それならこれをきっかけに事業の継続を断念してもおかしくありませんよね。

 先日、日本銀行から正式に新札の発行日が2024年7月3日と発表されましたが、それ以降に、もうちょっと頑張ったとして盆営業で抜きまくってから休廃業しようと考えるホールは少なくはないはず。ここ数年で全国のホール軒数は大きく数を減らしていますが、この新札発行でついに5千軒台になってもおかしくはないでしょう。

◆金価格上昇でさまざまな問題が噴出 お金の話繋がりで、ここからは都内のホールで用いられている換金用景品、いわゆる特殊景品の話を少々。都内のホールではさまざまな経緯を経て、特殊景品には市場流通性が高いとされる金景品が用いられています。そして金価格の上昇の都度、金景品の価格も見直され、それにともなって予想だにしなかった問題も表面化しています。

 例えば金価格が想定以上に高騰したため、金景品を交換所に持ち込むよりも質屋や金券ショップなどに持ち込んだほうが得をするなど、換金所以外の別の場所で換金が行われるようになったことです。法的に1グラムの金景品は交換所では最大でも9000円でしか買い取れないという縛りがありますが、金相場はその上をいきます。

 市場での金価格は1グラム1万円以上ですから、手間を考えても別の場所で換金する人が出てくるのも当然。なかには交換所の前で待ち伏せして金景品を買い取るグループもあったりするようで、交換所側も対策を行っていたとしても世界的に金価格が上昇している以上はどうしようもありません。

◆景品の金額が変更されることも

 業界としても指をくわえているわけではなく、対策を講じ始めました。まずは1グラム景品の取り扱いが停止されることに(※まだ流通している店舗もあるようです)。さらに1000円に対応していた0.1グラム景品が、12月になっていきなり倍の2000円に変更されました。

 先日、たまたま変更された日にいつものホールで遊んでいて、いつもどおり余り玉が出ないようにパーソナルシステムで玉数を調整してカウンターにカードを出したら、いつもとは違って千円分の余り玉が……。交換率でも変更されたのかなと納得できないまま余り玉で交換した大量のお菓子を持ちつつ交換所に行ったら、0.1グラム=2000円となっていてなるほどそういうことねと(苦笑)。

◆東京は千円単位でしか交換できない謎

 そもそも0.1グラム景品が1000円で運用されていたつい先頃までも、千円単位でしか交換できないというのは、東京以外のホールで打たれている人にとっては信じられないことだったと思います。隣県であり筆者の住まいがある神奈川の場合は最低500円、さらにその隣県であり筆者の実家がある静岡では最低200円。

 今はどうかわかりませんが、かなり昔に旅打ちした地方では100円単位もありましたし、基本的にそこまで余り玉を意識する必要はありません。でも今の東京では、0.1グラム景品の交換に満たない玉数であれば2000円近くをお菓子などの一般景品に交換しなくてはならず、それなりに腰をすえてまとまった出玉を得られるまで打たなければならなくなりました。

◆2024年春には銀景品が登場?

 手軽で身近な娯楽であるはずのパチンコが、既に機械のスペックがそれを否定しつつあるのに、運用面でも大きく乖離しつつあるというのが率直な感想。来年の春を目処に500円に対応した景品として銀を使った景品が流通するという話もありますが、それなら0.1グラム景品の値上げをそこまで待ってくれればいいのに……とも思いますし、業界がますます自分で自分の首を絞めてファン離れを加速させているとしか思えません。

 金景品導入には導入に至るまでにはさまざまな経緯があると前述しましたが、その大きな目的は業界の健全化。何かにつけては健全化という言葉が使われてきた業界ですけど、そこにユーザー目線とファンの思いが常に欠けていると改めて思わされる出来事でありました。

文/キム・ラモーン【キム・ラモーン】
ライターとして25年のキャリアを持つパチンコ大好きライター。攻略誌だけでなく、業界紙や新聞、一般誌など幅広い分野で活躍する。

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