破産の「今庄青果」 震災翌日も営業、仙台市民の生活支える 伝統野菜普及にも力

 仙台朝市(仙台市青葉区)の「顔」として往時は3店舗を構えた青果店「今庄(いましょう)青果」(同)の破産が伝わった21日、利用客や朝市関係者からは驚きと落胆の声が上がった。

合言葉は「いざという時に役に立て」

 朝市場店に人影はなく、空の段ボールが積み上がっていた。東四店とともに、今月15日が最後の営業になったという。

 青葉区の女性(79)は「季節を先取りしていて、品ぞろえが良かった」と振り返り、太白区の女性(73)は「通販や宅配は便利だけど、対面の良さがあった」と閉店を惜しんだ。

 今庄青果は仙台朝市が生まれた終戦直後からの老舗で「朝市の顔」だった。「いざという時に役に立て」。東日本大震災の発生翌日も休むことなく朝から店を開け、市民の生活を支え続けた。

 生産者と消費者をつなぐ「地元の八百屋」として、伝統野菜の販売に力を入れた。曲がりネギや仙台白菜などを店頭に並べ、対面販売で地域の食文化の良さを伝えた。

 宮城県名取市のセリ農家三浦隆弘さん(44)は「伝統野菜の継承と普及に熱心に取り組んでくれた。曲がりネギや仙台セリの今があるのは今庄さんのおかげだ」と感謝した。

 商店街振興組合の設立では中心的な役割を担い、朝市の活性化に力を尽くしてきた。東四店の隣で武田青果を営む武田枝美代表(65)は「仙台七夕まつりなどのイベントも引っ張ってもらった。存在が大きかっただけにショックは大きい」と肩を落とした。

 組合の佐藤誠理事長(50)は「常に周囲のことを考え、まねできないと尊敬してきた。空いた穴は大きいが、残った店で埋めていくしかない」と話した。

 朝市場店の東隣にある海産物正海(まさうみ)屋の佐野浩美さん(52)は「朝市は駅から近いとはいえ、車ユーザーには郊外が便利。客足が落ちていたところにコロナ禍が加わり、きつかったと思う」とおもんぱかった。

コロナ禍で飲食店向けが低迷

 青果物小売・卸売業の今庄(いましょう)青果(仙台市青葉区)は21日までに仙台地裁に自己破産を申請し、破産手続きの開始決定を受けた。決定は19日付。破産管財人によると負債額は約2億3000万円。

 仙台駅西口にある仙台朝市の起源とされる仙台空襲後の「青空市場」時代から続く老舗。1992年の仙台朝市商店街振興組合の設立では中心的役割を担い、「市民の台所」と呼ばれる朝市の活性化に尽力した。

 帝国データバンク仙台支店によると、46年創業で91年に法人化した。仙台朝市で青果物小売店を営み、飲食店向け卸売業も手がけた。一時期はエスパル仙台内に店舗を構え、97年6月期の年間売上高は約5億円あった。

 消費低迷やスーパーとの競争激化に加え、仕入れや輸送費用などの経費増大が経営を圧迫。新型コロナウイルス禍で飲食店向けの卸売り取引が大幅に落ち込み、2023年3月期の売上高は約1億6000万円まで減少した。

 22年には仙台朝市の本店機能の一部を卸町店(若林区)に移して卸売り機能を強化したが業績は上向かず、取引先への支払い遅延も発生。今月15日付で全従業員を解雇し、事業を停止した。

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