文化財の修理や人材育成などを一元的に担うため、政府が2030年までをめどに京都府で建設を計画している国立の「文化財修理センター」(仮称)の基本構想が明らかになった。国が積極的に関与し、人材育成にも力点を置き、中長期的に持続可能な文化財の保存・活用を目指すことが柱だ。文化庁が近く公表する。 【写真】繊細な作業が求められる文化財保護の現場(2021年、山科区の随心院で)
政府関係者が明らかにした。日本では、文化財を元の状態に戻すのではなく、現在の状態を後世に継承する観点を重視し、修理作業を行ってきた。
文化財の修理はこれまで主に民間の工房が担い、国が資金面を支援してきた。このため、基本構想では「文化財修理の推進と質の管理を業務とする主体が不明確」と言及し、修理計画の全体をコーディネートする人材の不足も課題だと指摘した。情報を集約して体系的に取り組むため、国が中心的役割を果たすことを期待したものだ。修理対象は彫刻、絵画などの国宝や重要文化財が中心となる見通し。
一方で、修理技術に関しては、職人の高齢化を踏まえ、「後継者不足による断絶の危機にあるものが少なくない」と危機感を示した。修理のためのスペース確保や、用具・原材料の入手が難しくなっている現状にも触れた。
文化財修理センターの役割は、〈1〉修理推進(情報集約と共有を含む)〈2〉調査研究のための修理・研究体制の構築〈3〉人材育成〈4〉情報発信(普及啓発)――とし、「司令塔機能」を果たすよう促した。
具体的には、修理の相談受け付けからアフターケアまでを一元的に管理し、修理記録を体系的に保存することが想定されている。修理技術者を目指す人材と、後継者を探す民間の工房とのマッチング機能も担う。修理文化の国内外での理解不足を解消するため、展示活動や動画配信も実施する。