いま日本はどんな国なのか、私たちはどんな時代を生きているのか。 日本という国や日本人の謎や難題に迫る新書『日本の死角』が8刷とヒット中、普段本を読まない人も「意外と知らなかった日本の論点・視点」を知るべく、読みはじめている。 【写真】人生がうまくいかない人の「決定的な間違い」とは…?
日本人が移動しなくなった?
コロナ禍のせいで、日本人は移動しなくなった──。 そう言われたとき、当然だろうと思う人が多いかもしれない。 しかし、じつは、日本人はコロナ禍以前から移動しなくなっていることをご存知だろうか。 話題書『日本の死角』では、「日本人が『移動』しなくなっているのはナゼ? 地方で不気味な『格差』が拡大中」という論考でそのテーマを深く掘り下げている。 〈東京、中京、大阪の三大都市圏に移動した人口、またそれを総人口で割った移動率をみれば、移動者、またそれに輪をかけ移動率が、1970年に最高値を記録して以降、ほぼ一貫して減少傾向にあることが確認される。 直近では2020年に68万人と最盛期の158万人の半分以下になっているが、これもコロナ禍の影響というより、あくまで大きなトレンドに従うものであることがわかる。〉(『日本の死角』より) 1970年からずっと減少傾向にあるというのは、意外かもしれない。 具体的には、移動が減るとはどういうことなのか?
「移動できる者」と「できない者」
『日本の死角』の論考の中で、「最大の問題は、移動の減少が均一にではなく、格差を伴い生じている可能性である」という指摘がされている。 〈『移動できる者』と『できない者』の二極化が進んでいる。 かならずしも地方から出る必要がなくなるなかで、都会に向かう者は学歴や資産、あるいは自分自身に対するある種無謀な自信を持った特殊な者に限られているのである。 問題は、そのせいで地方社会の風通しが悪くなっていることである。 学歴に優れ、資産を持つ『社会的な強者』だけが抜けていく地方になお留まる人びとには、これまで以上に地元の人間関係やしきたりに従順であることが求められる。 結果として、地方では『地域カースト』とでも呼べるような上下関係が目立つようになっている。 移動の機会の減少は、それまでの人間関係を変え、ちがう自分になる可能性を奪う。その結果、親の地位や子どものころからの関係がより重視される社会がつくられているのである。〉(『日本の死角』より) これを読む人は、移動をしている人だろうか。 地方に住む人であれば、「地域カースト」といった人間関係に心当たりはあるだろうか。 移動が減っている現実を直視し、日本社会の未来を考える契機としたい。
現代新書編集部