ホタテ輸出先に韓国、EU、タイ、ベトナムを追加 中国禁輸受け多角化、政府が決定

政府は25日、農林水産物・食品の輸出拡大に向けた実行戦略の改定を決めた。東京電力福島第1原発処理水の海洋放出後、中国による日本産水産物の全面輸入停止で打撃を受けるホタテに関し、韓国、欧州連合(EU)など4カ国・地域を輸出拡大先に追加。輸出先の転換、多角化を進め、リスク分散を図る。

 首相官邸であった関係閣僚会議で改定案が了承された。従来の実行戦略で、ホタテの輸出拡大先としていたのは中国、台湾、米国。今回の改定で韓国、EUのほか、タイとベトナムを加えた。2025年の輸出目標額は韓国41億円、EU45億円、タイ24億円、ベトナム5億円と設定した。

 これまで殻付きホタテは中国に送られ、殻むき加工して米国に再輸出されてきたが、中国からタイ、ベトナムへの転換を図る。米国への輸出額も19年実績の23億円から、25年目標で130億円に増やす。

 中国には規制撤廃を強く働きかける一方、25年目標を19年実績(268億円)と同規模の270億円と見積もった。22年の中国向けホタテの輸出額は467億円。中国を含む25年目標の合計は656億円とした。

 ホタテ以外ではコメの輸出拡大先に台湾、牛肉はイスラム諸国を追加。25年の目標額をそれぞれ9億円、55億円と見込んだ。

 改定戦略には(1)海外ニーズに応じた農林水産物を安定的、継続的に輸出できる産地育成を目指し、フラッグシップ輸出産地(仮称)を25年度までに50カ所程度選定する(2)農林水産省とJA、都道府県が連携して産地支援策を協議する場を設ける-ことも盛り込んだ。

 23年の農林水産物・食品の輸出額は10月末現在、1兆1664億円で、政府は25年の目標額を2兆円に設定する。関係閣僚会議で、林芳正官房長官は「23年の輸出額は処理水放出で減速した。2兆円は厳しいが、政府一体で輸出先の多角化を進める」と述べた。

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