ダイハツ「悪質不正」を生んだ「車は妥協の産物」という認識《元従業員が証言》 管理職は「運転が下手なヤツは死ねばいい」

 認証を受けるにあたり、エアバッグの衝撃実験をタイマー作動でごまかすなど命に直結する悪質な不正が多数行われていたことが発覚した自動車メーカーの「ダイハツ工業」。不正が明らかになったのは、実に64車種にのぼるという。この問題を受け、ダイハツは自動車を組み立てる国内全工場の稼働を、12月26日までに全面停止すると決定。“ダイハツショック”は大きな波紋を広げている。

【写真】管理職は「運転が下手なヤツは死ねばいい」ダイハツの奥平総一郎社長


ダイハツ本社

 そんな中、同社の元従業員が「週刊文春」の取材に応じ、「厳罰的な社風が社内の萎縮を招き、不正の温床になっていた」などと証言した。

「ミスが決して許されず、報告もできない」

 今回の問題に関して、第三者委員会は報告書で「原因」として指摘したのが、「現場任せで管理職が関与しない態勢」「ブラックボックス化した職場環境」など5点だった。

 これについて、2010年代に同社の設計部門に勤務していた元従業員は「そもそも、ミスが決して許されず、報告もできないダイハツの社風が背景にあるんです」とした上で、次のように証言した。

「設計や実験は常に納期問題を抱えていました。社内では『車は妥協の産物』という認識のもと、『とりあえずこれでいいや』で発売後に不具合が出たら設計変更するというプロセスが長年行われていました。ある意味、客は“人柱”だったのです。

 海外向け車種の設計でも同様の問題はあった。現地ディーラーから不具合が報告されても、『その国の環境が特殊だから壊れた』と回答するばかりで何も答えようとはしない。例えるなら『イギリスは雨が多いから』と言うようなものです」

 また、社内は「囚人のような職場環境」(同前)で、とりわけ若手の意見は全く聞かれなかったという。

「運転が下手なヤツは死ねばいい」

「ある若手が『自動ブレーキは搭載しないのですか?』と質問したところ、管理職が『自動ブレーキ? ブレーキは自分で踏めばいいよ。運転が下手なヤツは死ねばいい』と返すのを見て、唖然としたこともありました」(同前)

 こうした証言について、ダイハツに事実関係の確認を求める質問状を送付したが、こう回答があるのみだった。

「現在、弊社は12月20日公表させていただいた通り、本件について、第三者委員会からの報告書を受領したところであり、その中での指摘いただいた事項の詳細確認を進めているところです。ついては今回いただいた個別のご質問については、回答をさし控えさせていただければと存じます」

 だが、ダイハツが抱える問題はこれだけではなかった–。

 現在配信中の「週刊文春電子版」では、「《深層レポート》ダイハツ『不正30年』の病根」と題し、30年にわたる長期間、同社で不正が蔓延した背景についてレポートする。社員を精神的に追い詰めた「なぜなぜ分析」、窓際族が集められた過酷な部署「人材バンク」の実態、そして、若手を軽視するダイハツの社風などについて、詳しく報じる。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 電子版オリジナル)

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