透漆を活用し、重厚感に加え星空のように光るのが特徴
伝統工芸品の津軽塗を製造販売する「たなか銘産」(弘前市)が、光を通す「透ける津軽塗」の独自技術を開発した。透け感のある素材の透漆(すきうるし)を活用した技術で、昨年10月に特許も出願。これまで津軽塗になかった照明器具やインテリアなどへの応用が期待される。
一般的に漆製品は黒や赤などの漆を何層にも塗り重ね、重厚感を持たせる。塗り重ねては研ぐといった工程を数十回繰り返す「研ぎ出し変わり塗り」という技法を用いる。漆に浮かび上がる複雑な模様が特徴だ。
透ける津軽塗は、模様となる無数の凹凸を研ぎ出す工程で透漆を使い、光を通すことに成功した。構想から10年。職人たちが試行錯誤を重ね、全国でも例のない漆作品を完成させた。
試作品のフロアライトは、独特の模様が浮かび上がるように光り輝く。螺鈿(らでん)の技法を用いたデザインは、貝殻の部分も透けて、まるで星空のように光る作品となった。消灯時は、従来の津軽塗と変わらない重厚感があり、光の具合でさまざまな表情を楽しめる。
田中寿紀社長は「津軽塗の技術はそのままに、漆の表現として新しいものができた。さまざまな可能性を持つ」と手応えを語る。
フロアライトは当面オーダーメード方式で販売し、価格は7万~12万円程度。今後は自社製品の開発のほか、宿泊施設の内装など企業間取引も視野に入れる。