ダイハツ工業の車両安全性などに関する認証不正の影響が、商用軽電気自動車(EV)の分野に及んでいる。同社とスズキ、トヨタ自動車は共同開発中の商用軽EVを2023年度内に国内で発売する計画だったが、当初の計画通りに投入するのが難しい状況になってきた。
今回の商用軽EVの国内投入は、トヨタなど3社が出資するCommercial Japan Partnership Technologies(東京・文京、CJPT)のプロジェクトの一環である。トヨタの電動化技術と、スズキとダイハツが持つ軽自動車への知見を活用して開発を進めてきた。
具体的には、3社が共同開発する商用軽EVはダイハツが生産して、スズキとトヨタにOEM(相手先ブランドによる生産)供給。3社がそれぞれのブランドで販売する計画である(図)。
図 3社が開発中の商用軽EV
(写真:トヨタ自動車、ダイハツ工業、スズキ)
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ただ、認証不正の影響でダイハツの国内における全完成車工場(4工場)は、2023年12月25~26日に生産を停止した。生産の再開時期は「現時点では見通せない」(同社)という。ダイハツの国内工場の生産再開が遅れると、商用軽EVの発売は2024年度にずれ込む可能性が大きくなる。
CJPTの社長を務めるトヨタ副社長の中嶋裕樹氏も、2023年12月20日に東京都内で開いた認証不正に関する会見で、「(今回の認証不正によって)商用軽EVの発売には確実に影響が出る」と述べていた。
3社の商用軽EVは、ダイハツの商用軽ガソリン車「ハイゼット カーゴ」のプラットフォーム(PF)をベースにした後輪駆動車である。電動パワートレーンはモーターとインバーター、減速機を一体化した「3 in 1」型で、同パワートレーンを後輪軸に搭載する。
床下に搭載するリチウムイオン電池は、LFP(リン酸鉄リチウムイオン)系を採用した。ニッケル(Ni)とマンガン(Mn)、コバルト(Co)を正極材に使う三元系(NMC系)よりもコストを抑えやすいことに加えて、耐久性や耐熱性が優れるためである。エネルギー密度は三元系の方が高い。
また、一充電からの航続距離は200kmを計画する。ただ、電池パックの容量(総電力量)は公表していない。原材料価格の上昇というコストの増加要因はあるが、車両価格は補助金を適用した場合で200万円以下を目指している。
ダイハツ工業は国内にあるすべての完成車工場(4工場)の生産を停止する。車両の安全性に関する認証試験において、新たに174件の不正行為が判明したことを受けた措置である。