2024年は世界でEVシフトが見直される年

皆様、あけましておめでとうございます。読者の皆様にはあまり関係のないことだが、日経ビジネス電子版で始まり、途中で日経クロステックに引っ越した当コラムも2023年末の「新型『クラウン』セダンとスポーツ、同じ車名と思えないキャラの違い」で、おかげさまで第250回を迎えることができた。新年のスタートは第251回からとなる。これまでのご愛読に改めて深謝申し上げたい。

新型「クラウン」セダンとスポーツ、同じ車名と思えないキャラの違い

 もう旧聞に属するが、2023年12月7日に日本カー・オブ・ザ・イヤー(JCOTY)の最終選考会が開催され、トヨタ自動車の「プリウス」が2023-2024 JCOTYに選ばれた。すべての選考委員の配点…

2023/12/19

 2023年は、ウクライナ戦争が一向に収束の兆しを見せないのに加え、新たにイスラエルがパレスチナ・ガザ地区への軍事攻撃を始めたことで、世界は一層混迷の度を深めた。ウクライナ戦争の影響で2022年はエネルギー価格が高騰し、特に欧州は大きな打撃を被った。その後、2023年になってエネルギー価格は落ち着きを取り戻したが、イスラエル紛争の今後の行方次第で、再びエネルギー価格に上昇圧力がかかる可能性があるとエネルギー・金属鉱物資源機構は指摘する。エネルギー・金属鉱物資源機構のリポート:https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1009585/1009925.html

EV販売の勢いに陰りは見られないが…

 こうした世界情勢は2024年の自動車業界にどのような影響を与えていくのだろうか。2022年は世界の自動車販売台数に占める電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)といったPEV(Plug-in Electric Vehicle:外部充電可能な電動車両)の比率が初めて10%を超えた。しかも、米Bloomberg NEF(ブルームバーグNEF、BNEF)の分析によると、リチウムイオン電池パックの価格が、資源やエネルギー価格の高騰を受けて、2021年から2022年にかけ150ドル/kWhから161ドル/kWhに上昇したにもかかわらず、である。BNEFの分析:https://about.bnef.com/blog/lithium-ion-battery-pack-prices-hit-record-low-of-139-kwh/

電池パックとセルの価格推移。2022年は電池パックの価格が上昇したにもかかわらず、EVの販売台数は伸びた。色の濃い部分がセル価格。2023年にはセル価格が大きく下落した

電池パックとセルの価格推移。2022年は電池パックの価格が上昇したにもかかわらず、EVの販売台数は伸びた。色の濃い部分がセル価格。2023年にはセル価格が大きく下落した

(出所:BNEF)

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 同社の調査によれば、2023年のバッテリー価格は14%下落し、過去最低の139ドル/kWhとなった。この数字は、EV用、電気バス用、定置用など、様々な種類のバッテリーの平均であり、EV用のパックの価格は平均より低い128ドル/kWhであった。こうしたバッテリー価格の低下にも後押しされ、国際エネルギー機関(IEA)の予測では、2023年のPEVの世界販売台数は前年比で約35%増の1400万台に上ったと見られている。つまり世界のPEV販売台数は、ウクライナやイスラエルの紛争にもかかわらず、2023年はその成長に衰えは見られなかったということだ。

 BNEFは2023年12月5日付の記事の中で「この半年間、EV需要が失速しているという見出しが躍ったが、データはそのことを裏付けていない」とし、今後もPEVの世界販売は順調に伸びると予測している。では同社の予測通り2024年もEVの販売台数は順調に伸び続けていくのだろうか。筆者はここに来て、EVの普及トレンドに変化の兆しが見えてきたと感じている。

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