東北大災害科学国際研究所は9日、能登半島地震の現地調査報告会を開いた。石川県珠洲市の富山湾側は日本海側に比べて隆起の規模が小さく、浅い海底に津波が押し寄せたことで被害が大きくなったと説明。富山湾は第1波の到達が早く、海底地滑りが起きていた可能性があるとの見解も示した。
共に津波工学の越村俊一副所長、今村文彦教授らが津波メカニズムを解説した。隆起は珠洲市の富山湾側で数十センチだったのに対し、日本海に面する輪島市では4メートルに及んだ。富山湾の珠洲市周辺は海底が浅く、半島を回り込んだ津波が屈折して多重的に襲ったと結論付けた。
富山湾での第1波到達の早さについても着目。今村氏は「富山沖にある海底谷で土砂が崩れたことで津波が発生した可能性は否定できない。南海トラフ巨大地震のエリアでも似た地形があり、教訓を生かさなければならない」と指摘した。
4、5日に七尾市、穴水町で建物被害の調査をした柴山明寛准教授(地震工学)は店舗併設型の住宅など筋交いが少ない建物が倒壊したと報告。「度重なる地震でダメージが蓄積したほか、積雪で住宅の基礎部分が腐食していたことが要因に考えられる」と述べた。
マス・エリック准教授(津波数値計算)は携帯電話の位置情報を基に珠洲や輪島などの人流を解析した。地震直後には標高10メートル以上の地点の人口が増えており、一定の住民が避難行動を取ったと推察した。
報告会は仙台市青葉区の研究所での開催とオンラインを併用し、計約1900人が傍聴した。