最大震度7を観測した能登半島地震で、新型コロナウイルスやインフルエンザなどが避難所で広がり、石川県内で少なくとも350人の感染が確認された。
政府や県は「災害関連死」のリスクが高まっているとして、避難所から被災地外のホテルや旅館などに住民を移す「2次避難」を加速させる方針だ。週内に1万人分の施設を確保できる見通しで、バスやタクシーなど5700人分の移動手段も確保した。
石川県は11日、厚生労働省などと連携し、専門医らでつくる感染症対策の司令塔となる専門組織を発足させた。災害時健康危機管理支援チーム(DHEAT)などが医療支援や感染症対策を進めてきたが、避難所は飽和状態で、スタッフも逼迫(ひっぱく)状況にあることから体制の立て直しを図る。
県内の避難者はピーク時から3割ほど減ったものの、学校などの避難所には2万人を超える人が身を寄せている。避難生活に伴う体調悪化で亡くなる災害関連死は8人確認された。
県は持病がある高齢者らを優先に2次避難を計画。県内外のホテルや旅館など約250施設に6900人分の部屋を確保し、7施設に約230人が2次避難した。
2次避難先は週内に計1万人分を確保できる見通しだ。国土交通省は、移動手段として5700人分のバスやタクシーが使用可能だと県に情報提供した。
ただ、住み慣れた土地から離れることをためらう住民も少なくない。岸田首相は11日の記者会見で「命と健康を守るためにも、より安全な環境への移動を積極的に検討してもらうことが重要だ」と述べ、2次避難を改めて呼びかけた。
避難所を出た後の住まいとして、全国の自治体は、民間アパートを借り上げる「みなし仮設住宅」や公営住宅の用意も進めている。同省によると、被災者向けに提供が可能な公営住宅の空き室は10日現在、47都道府県の約900自治体で計約6500戸確保されている。
一方、石川県輪島市は、市内の全3中学校の生徒約400人のうち希望者を、同県白山市の県立施設2か所に移す方針を決めた。人数が多い場合、白山市の協力を得て近隣中学に通学させることも検討している。親元を離れることになり、12日までに保護者の意向を確認する。
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石川県は11日、県内の死者が213人(午後2時現在)になったと発表した。津波で行方不明となっていた珠洲(すず)市の1人は、同市宝立町鵜飼の浜市鉄次さん(54)で、家族が死亡を確認した。連絡が取れない「安否不明者」は37人となっている。