検事が冤罪(えんざい)をつくり、日本を地獄に落としている――。検察への“批判”めいた文章がつづられた1000円札が一部で出回っている。こうした「落書き」は犯罪にならないのか。うっかり、お釣りで受け取った場合に使えるのか。【菅野蘭、大野友嘉子】
スーパーでのお釣りに
「買い物に行ったらお釣りの中に紛れていて『何これ!?』って、びっくりしちゃった」
飲食店の経営者は戸惑いを隠さない。2023年11月中旬、東京都中野区のスーパーマーケットで買い物し、帰宅後に財布の中を整理している時に異変に気付いたという。
1000円札の裏側には、判子を押したような黒っぽい活字が横に4行。一部は潰れて見にくいが、次のように読める。
「法務省検察庁がマスコミと完全にゆ着して情報操作してます。検事たちが嘘(うそ)の証明書を捏造(ねつぞう)してえん罪等を大量に作り報道もされず日本を地獄に落としてます 国民のために法務省官僚全員を殺さなければならない」
紙幣への「落書き」法的問題は?
インターネット上には数年前から「検事13名が司法書士試験の合格証を書(き)換えて犯罪をしてます」「法務省が1兆1千億円殺人未遂事件をしてます 被害者です 助けて下さい」などと、法務省や検察庁・検事について記された1000円札の情報が寄せられ、一部で報道もされている。
法務省は取材に対し、記述内容への見解は控えるとした上で「落書きが各所で発見されているという報道は承知している」とした。
日本銀行によると、硬貨を削るなどして加工すると貨幣損傷等取締法違反罪に問われるが、紙幣への「落書き」については対応する法律がなく、その行為だけで罰せられる可能性は低い。
ただ、日銀の担当者は「法令上、ただちに違法な行為とは言い切れませんが、傷みが激しかったり、本物の紙幣にあるはずのない書き込みや印字がされていたりする紙幣を手にしてしまった場合、偽札かどうかの見分けがつきにくくなります。紙幣は、みんなで使うものなので、大切に取り扱ってほしい」と話している。
日銀で交換してくれる
今回のようなケースは、そのまま使うこともできるが、東京・日本橋にある日銀本店や全国の支店で交換に応じてくれる。日銀はスムーズに対応するため、「事前に連絡を」と呼び掛けている。
なお、破れてしまった紙幣は①券面の3分の2以上が残っている場合は額面価格の全額②券面の5分の2以上、3分の2未満が残っている場合は額面価格の半額(1円未満の端数は切り捨て)――と引き換えが可能だ。