被災者が必死で困難に立ち向かい、警察、消防、自衛隊などが懸命に救助や捜索にあたる──能登半島地震の被災地の現場では懸命な復興作業が続いている。有志のボランティアが現地入りすることに賛否の声も上がるなか、そうした活動を“妨害”するようなトラブルも起きていた。
【写真】避難所に設置された仮設トイレ。横には柄杓とポリバケツ
県外ナンバーがパンクで立ち往生
「災害ボランティアの受け入れ態勢が整っていない」として、被災地である石川県から個人での現地入りに自粛要請が出ていた地震発生直後。だが、「被災者の方が心配で」など“止むに止まれぬ”思いから、被災地入りする個人ボランティアが続出した。
一方で、被害の激しい能登方面に向かう道路は大混雑。道路脇には、道路の亀裂にタイヤを取られパンクした一般車両が並び、渋滞の一因に。なかには「山梨」「足立」など県外ナンバーがあったほか、石川ナンバーのレンタカーも目についた。
渋滞が支援物資の輸送や患者の搬送に支障をきたすのを避けるため、石川県は能登方面への一般車両の交通規制を実施。しかし8日の夜には、穴水町付近の封鎖された国道で立ち往生する「とちぎ」ナンバーの運転手の男性(60代)の姿があった。男性が言う。
「栃木県から車でここまで来ました。県に電話で問い合わせたら『この週末は間に合っています』と言われたんだけど、1週間ほど空けてきたので力になりたいと思って来てしまったんです。目的地は輪島なんだけど、今日は車中泊かな」
輪島市は1月6日、ホームページ上で次のようにアナウンスしている。
「現在、輪島市では地震の被害により各種インフラが整っておらず、ボランティア等で大勢の方が来られると混乱を招き2次災害につながる危険がありますので、現時点ではボランティアの受付はしておりません」
道路で大胆に放尿
直面するのは、通行の問題だけではない。穴水町や輪島市・珠洲市などでは震災当日から断水状態が続いている。避難所では仮設トイレが設置されるまでの数日間、水が使えず流すこともできず、住民は汚れや匂いに悩まされていた。避難生活を続ける70代女性が言う。
「ボランティアでいらっしゃった方が、立ち小便をする姿が目につきます。茂みに入っていく人はまだいいですけど、車から出て道路で大胆にする人もいました。避難所のトイレが汚くて使えないのはわかりますが、ただでさえ衛生環境が悪いのにとストレスに感じてしまいます。
炊き出しのカレーを食べていた県外からの方もいました。話し相手になってくれるだけでもありがたい気持ちはあるんだけど、いまは遠慮してほしいんです」
穴水町の役場の男性職員は、限られたガソリンの消費も懸念していた。
「1台3000円分の給油量に制限されたスタンドがギリギリで営業しているなか、そこに行列を作って給油する県外ナンバーの車もいます。金沢に戻れば制限なく給油ができるのに……。
個人で持ってこられる物資の量には限界がありますし、それが現地で本当に必要かどうかはその時にならないとわからない。積雪や大雨の影響もあるので、双方のためにも、現地での支援は待っていただきたい」
善意であっても被災者を困らせることになっては本末転倒である。
※週刊ポスト2024年1月26日号