「人食いバクテリア」とも呼ばれる劇症型溶血性レンサ球菌感染症の2023年の患者報告数が過去最多となった。急激に症状が進み、致死率は3割とされる。病原性や感染力の高い株が国内でも相次いで確認されており、感染の拡大が懸念されている。厚生労働省は17日、患者から採取した検体の解析を進めるよう自治体に依頼した。 【図表】多様なコロナ後遺症 国内発生4年 不明だった実態、徐々に明らかに 国立感染症研究所(感染研)によると、23年の患者数は941人(速報値)。新型コロナウイルスの影響でここ数年は減っていたが、過去最多だった19年(894人)を上回り、1999年の調査開始以来最多となった。 主な病原体はA群溶血性レンサ球菌という細菌で、一般には子どもを中心に咽頭(いんとう)炎を起こす。ただ、感染すると年齢を問わずまれに劇症化することがある。30代以上が多く、高齢者が大半を占める。 劇症型の初期の症状は咽頭痛や発熱、下痢・嘔吐(おうと)、全身の倦怠(けんたい)感などだが、多臓器不全や呼吸不全などを起こし、発症から数十時間で死亡することもある。致死率は3割とされる。 筋肉周辺の組織を壊死(えし)させることから、「人食いバクテリア」とも呼ばれる。通常は菌が検出されない血液や髄液などに菌が侵入し、多くの臓器の機能が急激かつ劇的に低下するのが特徴だ。 劇症型を引き起こすのは、A群のほかG群など複数ある。感染研によると、A群の50歳未満の死者数が増え、23年7~12月中旬に報告された50歳未満の患者65人のうち21人が死亡した。 感染経路はわからないことも多いが、手足の傷口からの感染が知られている。感染症に詳しい川崎医科大の中野貴司教授は「なぜ劇症型になるのかなど、はっきりとわかっていないことも多い。手を洗ったり、傷口を清潔に保ったりするなど、一般的な感染症対策をしてもらいたい」と話す。