昭和の時代、女性が結婚相手の男性に求めるものとして「3高」が挙げられていた。「高収入・高学歴・高身長」のことで、こうした男性が理想の結婚相手としてもてはやされてきたのだ。これに対して近年では「3低」男性が人気だという。「低姿勢、低依存、低リスク」で、とくに共働きと夫の家事育児への積極的参加によってリスクを分散させる「低リスク」を重視する女性は少なくないようだ。
別れたあとにSNSグループでいろいろ言われたくない
一方、1990年代半ばから2010年代序盤に生まれたZ世代の若者にとって、「低リスク」の内実は少々違う側面もある様子。「お金の問題よりもむしろネットのリスクが怖い」と語るのは、都内の私立大学に通う女子学生・Aさん(21歳)だ。
「『低リスク』が重視される社会というのはとてもよくわかります。私の周りでも『将来の結婚相手を見つけないと』と食事会をしたり、マッチングアプリに登録している友人は確かにいますが、彼女たちは『大学時代によい就職先に入るオトコを見つけないと、将来苦労すると親に言われた』と言います。つまり親世代の価値観なんです。
でも私を含めて、大学生が恋人に求める『低リスク』はネットリスクが低い人だと思う。SNSが発達しすぎて、自分以外の友人がSNSでどのような会話をしているのか、本当に不安になることが多いんです。たとえばインスタグラムのストーリー機能で、自分だけ『親しい友人』に入れてもらえていないかもしれない。自分の知らないところでLINEグループがあるかもしれない……。
もし好きな男性に告白してフラれた場合や、彼氏と別れた場合、そういうグループで色々言われたくないですよね。だからそういうことをしなそうな相手を選ぶ傾向はあると思います。また結婚相手ともし離婚してしまった場合。離婚後にリベンジポルノなどをされないようにという意味でも、SNSの使い方はすごく大事だと思う」(Aさん)
更新頻度が高すぎると「地雷」女子認定
この考え方は女性だけではないようだ。都内の国立大学に通う男子学生のBさん(21歳)は、交際する際には相手のSNSの利用方法を細かくチェックするという。
「今の時代、僕を含めて、恋愛で悪目立ちをすることを嫌う若者が多いと思います。よくアイドルが恋愛で『匂わせ投稿』で炎上したりしますが、一般人でもそういうものは噂のタネになるので嫌われる傾向があります。スクショされ、裏でネタにされるんじゃないかという不安をみんな抱えていると言いますか……。だからSNSトラブルにおける『低リスク』は大事な要素です。
たとえば僕と友人がよく使っているSNSアプリは、インスタのストーリー機能、Threads(スレッズ)、X(旧Twitter)、TikTok、スナップチャット、BeReal(ビーリアル)。このどこかひとつにでも黒歴史を残してしまうと、あとから掘り起こされるんじゃないかと不安になります。自意識過剰と思われるかもしれませんが、これがSNSに毒されている僕のリアルなんです」(Bさん)
このようにSNSのリスクを認識しつつも、Bさんはこれらのアプリを消去したり、投稿を止めることはできないという。だからこそ交際相手には、「SNSをあまりやっていない女子」が理想だと続ける。
「自分自身がSNSを過剰にチェックしてしまう人間なので、交際相手にはSNSをあまりやっていない子がいい。SNSなんて気にしないし、ほとんど見ていないような子が理想です。逆に言えば、インスタのストーリーが“切り取り線”(※更新頻度が高いと、コンテンツが切り取り線のように表示される)のようになっている女子は絶対に無理。
あとは、すぐに鍵アカにしたり解除したり、“ブロ解(ブロック解除)”を繰り返すような子も『地雷だな』と思ってしまう。純粋に恋に落ちるということはなくて、知り合った女の子のSNSの使い方をめちゃくちゃリサーチしたうえで、関係を深めるかを考えます。もちろん恋人というだけでなく、“いずれ結婚を考える相手”という意味でもチェックしてしまいますね」(Bさん)
デジタルネイティブ世代として生まれ育ち、幼少期からSNSに慣れ親しんできたZ世代にとっては、SNSリスクが低い(=低リスク)が交際相手を選ぶ際の重要な要素になっているようだ。とはいえ、それを相手にだけ求めるという矛盾については無自覚なことが多いのは気になるところだ。