仙台市で自家焙煎(ばいせん)コーヒー豆の販売や喫茶店経営を手がけ、昨年10月に倒産した「ネルソンコーヒー」の元従業員らが12月下旬、青葉区中山の旧本店近くに「CAFE NELSON(カフェネルソン)」をオープンさせた。運営体は別だが、取引企業の注文を受けてから豆を焙煎する「ネルソン」の営業スタイルと名称を引き継ぎ、コーヒー豆販売専門店として再スタートを切った。
焙煎して翌日納品 スタイルも踏襲
店長としてかじ取りを担うのは、旧ネルソンで15年間営業職を務めた鈴木淳さん(54)。約25平方メートルの空き店舗を自前で改装し「フレンチロースト」「杜のブレンド」などネルソンの原点とも言える七つのブレンド商品を販売する。商品には旧ネルソンと同じパッケージを活用している。
旧店の味を知る焙煎士を雇い、仙台近郊のレストランや喫茶への卸販売も再開させた。コーヒー豆は焙煎後に時間がたつと酸化して「えぐみ」を増す。前日朝までに注文をもらえれば、焙煎したての豆を翌日納品する売り方も踏襲した。
鈴木さんは旧ネルソンの事業停止でスーパーなど取引先への謝罪など後始末に追われ、「多くの方々に迷惑をかけてしまった」と言う。ただ、40年近く仙台で育んだブレンドの味を惜しむ声は強く「ネルソンの看板をなくしちゃいけない」との思いを強めた。
支えたのは宮城野区でカフェを営む畑中隆太さん(49)の存在だ。05年に榴ケ岡に店を構えて以来、自慢の料理と菓子に欠かせないコーヒーとしてネルソンの焙煎豆を使い続けてきた。
昨年7月、鈴木さんから納品停止の説明を受けると即座に「ネルソンをなくしちゃ駄目だ」と旧経営者に直訴。事業停止後、新ネルソンの開業に向けて空き店舗や焙煎機の確保に奔走し、新店舗のオーナーに就いた。「鈴木さんの商売への真摯(しんし)な姿勢とコーヒーへの情熱があれば、うまくいくと感じた」と畑中さんは話す。
新ネルソンは昨年12月21日、旧本店から50メートルほど離れた場所で開店した。通りがかった地域の常連たちが足を止めて「再開してくれてありがとう」と祝ってくれた。
「ありがとうと言いたいのはこちらです」と鈴木さんは目を細め、「大きくなくていい。『ネルソンのコーヒーっておいしいよね』ってまた思ってもらえるお店を地域密着でつくっていきたい」と力を込める。
店舗の住所は青葉区中山5丁目19の9。豆は100グラムで630円から。営業は午前10時~午後5時(土曜・祝日は午後4時まで)。定休は水曜、日曜。連絡先は022(341)6173。
[メモ]帝国データバンク仙台支店によると、ネルソンコーヒーは1985年創業。コーヒー豆の鮮度を追求する店として仙台市内を中心に知られ、レストランや喫茶、スーパーに豆を卸したほか、市内を中心にコーヒーショップを最大5店舗運営した。全国チェーン店との競争激化や新型コロナウイルスの影響で昨年7月に事業を停止。10月に倒産した。