NATOにスウェーデン加盟へ…トルコ議会が承認、ハンガリー首相「支持」

【カイロ=田尾茂樹、ベルリン=中西賢司】トルコ議会は23日の本会議で、北欧スウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟を認める法案を賛成多数で可決した。加盟には全加盟国の批准が必要で、残るハンガリーのビクトル・オルバン首相も24日、議会に早期承認を求めた。批准を先送りしてきた両国で承認手続きにメドが立ち、スウェーデンの加盟が実現する見通しとなった。 【写真】スウェーデン海軍の潜水艦。対ロシア抑止の最前線を担う

スウェーデンの北大西洋条約機構加盟について投票を行うトルコ議会(23日、アンカラで)=AP

 トルコ議会が法案を可決した直後、スウェーデンのウルフ・クリステション首相は、X(旧ツイッター)への投稿で、「我々がNATOの正式な加盟国となるのに一歩近づいた」と歓迎した。スウェーデンは、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵略を受けて約200年に及ぶ軍事的中立政策を転換し、同年5月に隣国フィンランドと共に加盟申請した。

 トルコのタイップ・エルドアン大統領は、トルコがテロ組織とみなすクルド人武装勢力の構成員を受け入れているなど両国のテロ対策が不十分として、加盟承認を保留していた。

 スウェーデンでは23年1月以降、イスラム教の聖典コーランの写しを燃やすデモが相次いだ。トルコは反発を強め、フィンランドのみの加盟を承認した。スウェーデンがその後、テロ対策を強化する改正反テロ法を施行するなどトルコの要求に応じたため、7月になってようやく容認に転じた。

 エルドアン氏は、加盟承認の見返りとして、米国に対しても、米議会の批判が強いF16戦闘機の売却を求めてきた。容認に転じてからも議会審議に時間をかけることで、バイデン政権に揺さぶりをかける狙いもあったとみられる。

 残されたハードルは、ハンガリー議会での批准のみとなった。オルバン氏は24日、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長と電話会談し、スウェーデンの加盟を支持し、ハンガリー議会に早期の批准を働きかけると伝えたとSNSに書き込んだ。

 ハンガリー側は、スウェーデンが自国の政治状況に懸念を示してきたとし、「同盟国になるための信頼関係を強化する措置をとっていない」(首相府)との批判を繰り返してきた。

 オルバン政権はウクライナの欧州連合(EU)加盟交渉の開始に反対し、「法の支配」の欠陥を理由に凍結された補助金約100億ユーロ(約1兆6000億円)の解除をEU側に約束させたばかりだ。スウェーデンのNATO加盟に難色を示していたのは、EUと重複加盟する同盟国から妥協を引き出す交渉カードにする狙いだとの見方もあった。

 ただ、オルバン政権にとっては孤立が深まる事態を回避したかったのも本音だ。ロイター通信によると、ハンガリー議会は休会中で2月中旬頃に再開する見通しだ。

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