環境省のレッドリストで絶滅危惧II類に指定されている渡り鳥のトモエガモの個体数が増えている。国内では2004年の調査で約2千羽に減ったが、この10年ほどで急増。昨冬は17万羽近くが確認された。近年多く集まるようになった千葉県の印旛沼では今季、6万6千羽超のトモエガモが越冬している。 【写真】印旛沼上空を群れで舞い飛ぶトモエガモ=2024年1月15日午後4時47分、千葉県印西市の印旛沼、小林正明撮影 トモエガモはロシアの北極圏で繁殖し、日本、韓国、中国で越冬する。 野鳥の調査を手掛けるNPO法人バードリサーチと石川県加賀市の鴨池観察館が22年10月~23年3月に全国で調べたところ、約16万7千羽の越冬が確認された。 国内では日本海側と九州の有明海周辺に越冬地が多く、太平洋側では宮城県や千葉県が目立つ程度だった。その中で印旛沼のトモエガモは18年に2千羽だったが、年々急増。昨冬は13万羽を超した。 主要な越冬地の韓国では30万~40万羽で安定しており、韓国からの移動とは考えにくいという。バードリサーチの神山和夫研究員(57)は「トモエガモの総数が増えているのではないか。ロシアの研究者も繁殖地が広がっていると報告している。温暖化で繁殖条件が良くなっていると考えられるが、北極圏の環境が変わってきていることが懸念される」と話す。 石川県加賀市と日本野鳥の会による渡りルートの調査で、北極圏が繁殖地だと判明したのは12年。まだ生態が不明な点は少なくない。 北極圏を繁殖地とするガン類やハクチョウ類は温暖化で繁殖場所が増えたり繁殖期間が長くなったりし、個体数が増えていると考えられており、トモエガモも同様の可能性があるという。(小林正明)