新NISAで狙いたい「高配当&株主優待」株。プロが実際に買った4銘柄も公開

◆アメリカ株と日本株の最大の違いは株主優待の有無
 日経平均が年明けから急騰し、決算時期を迎えた市場にも関わらず、3万6000円台を固める地合いになってきた。多くの人が資産を貯蓄から投資に振り向けているようだ。

 ネット取引で人気の某証券会社が、NISA口座の開設が殺到し、書類提出後1か月ほど時間がかかりますとお詫びの表示をした。私が取引先として主に使わせてもらっている会社なのだが、私が2年ほど前に開設した時には1週間ほどしかかからなかった。

 多くの人がオルカン、全米株式と、米国株中心のつみたてNISAに注目しているが、2022年、2023年の2年分の株価の推移を見ると、日本株は米国株よりいい成績を残している。

 円安と米国株高がこれからも半永久的に続くだろう、これが一番確実な投資である、と思っている人が多いのだろうか。もちろん、投資は人それぞれの考えで行うのだから、それにケチをつけるつもりはない。

 アメリカ株投資と日本株投資での大きな違いといえば、その一つに株主優待があるかどうかと言われる。

 株主優待制度は、かつてあまり配当金を出さなかった時代の日本の株式会社の多くが、長期にわたって保有してくれる個人株主に対して始めた優遇策の一つで、極めて日本独特だ。特に1990年代に入ってバブルが崩壊する中で、株価で評価損を出しているにも関わらず所有している株主に対して感謝の意も込めて、いや、引き留め策として、株主優待制度は拡充していったとも言われる。

 その内容は外食であれば、お食事券。興行会社であれば、映画鑑賞券や演劇鑑賞券。鉄道割引券や国内線の割引券などもおなじみだ。

 生活用品を扱う会社なら新商品の詰め合わせ、ビール会社ならビールの詰め合わせと、自社の展開する商品を提供するだけでなく、中にはコンビニなど多くの店舗で使えるプリペイドカードのクオカードやカタログギフトなどを提供する会社もある。

◆株主の保有年数で優待内容もアップグレード

 人気バラエティ番組「月曜から夜ふかし」に出演するプロ将棋士で投資家でもある桐谷広人さんが、株主優待を期限までに使い切るためにママチャリに乗って東奔西走する様は多くの人がご存知だろう。

 株主優待の特徴として、優待内容が株式保有数に比例してないことが多い。

 例えば、100株以上の保有者に対して一律提供するといった具合だ。100株保有者でも1万株補修者でも、優待は同じなのだ。

むしろ、優待内容がアップグレードしていくのは、株式数よりも株主の保有年数によるものが多い。1年間保有している人には1000円分のクオカードを出し、2年以上保有すると毎年2000円分になるといった具合だ。

 しかし、外国人株主の存在が顕著になって株主還元姿勢が高まり、配当金に対して積極的になる会社も増えてきた。また、日本以外に居住地のある株主や機関投資家にとってみれば株主優待は不要の産物。株主優待などはやめて配当金に回せという声も出てくる。

 今も約4割の会社が何らかの株主優待を継続していると言われるが、多くの人がもらって嬉しい優待をしている会社はそれほど多くない。

◆おすすめの株主優待銘柄とその内容

 そんな中で、株価は堅調で、配当金もそこそこ良く、そして、魅力的な株主優待をしていることでバランスの良い銘柄として多くの人気を集めているのがKDDI(9433)だ。

 同社の株主優待は100株以上1000株未満の保有者に初年度から3000円、3年以上株を保有すると5000円相当のカタログギフトを出すもの。株価は底堅いし配当金も悪くないので、長く持っておきたい、一度買ったら売りたくない銘柄の代表格として、多くの個人投資家の支持を集めてきた。

 しかし、1月16日。そのKDDIの株主優待が大きく変更されることが発表された。

 カタログギフトをやめポンタポイントに変更する、と。例えば100株所有者の優待は1年以上保有が条件となり、5年未満までは2000ポンタポイント、5年以上では3000ポイントを贈呈することになる。

 それまでは、5年までは3000円相当のカタログギフト、5年以上は5000円相当だったので残念に思う人も多いだろう。

 一方でポイントの方が使いやすいという方もいるだろう。この優待は、広く使えるポンタポイントではなく、総合通販サイトauマーケット限定のポイントにする場合は、1.5倍になる。

 2023年夏以来、株式市場は高配当銘柄に加え、いい株主優待を出す銘柄が人気を集めてきた。特に、1月に始まった新NISAで投資を始める個人投資家の多くは、日々売買を繰り返すというよりも、中長期保有の目的で始める人が大半のはず。それなら、株主優待や高配当を出す株主還元姿勢が強い会社が人気を集めるのは納得がいく。

 事実、100株を5年間保有すれば、配当と株主優待で7000円分のリターンがあると人気のNTT(9432)は1月に入り一気に株価を上げ、バブル後の最高値を更新する勢いだ。

二輪や自動車のシートを主力商品として扱うTSテック(7313)も、クオカードやカタログギフト、さらに1株あたり73円の配当に加え、業績も悪くないので、人気だ。

◆筆者が実際に買った銘柄を公開

 筆者が1月に入り高配当と株主優待に着目して取得した銘柄をいくつか紹介しておきたい。

 まずは、生損保販売代理店の大手、アドバンスクリエイト(8798)。単元株は10万円と少しで手に入る上に、配当は1株あたり35円。さらに、2500円相当のカタログギフト。ということで100株だけ購入した。大きく下がることがなければ買い増す予定もない。

 産業経済省が選定したグローバルニッチ企業100社の一つで、ネジ鉄鋼が売りの東京鐵鋼(5445)は、配当金が1株あたり200円で、購入時の配当利回りは4.5%ほど、さらに2000円のクオカードの株主優待も考えると、総合利回りは5%を超える。そこで、100株だけ購入し様子を見ることにした。

 以前から所有していた経済産業大臣が筆頭株主のINPEX(1605)は、1月以降の日経平均の急騰の流れの中でも、原油価格の低迷が原因となって買いやすい株価だったので買い増し。クオカードの優待がもらえる400株まで買い増しした。

 また、アスファルトを生産する設備「アスファルトプラント」を製造する、日工(6306)は配当が30円で配当利回りは4.2%ほど、さらに株主優待のクオカードは500株以上保有していれば長期保有で増えていくということもあり、やはり1月になってから新たに購入した銘柄だ。

 市場関係者の中には、すでに3万8900円のバブル時代の史上最高値の更新は当たり前で、4万円も目前だという見解を示す人が多くなった。が、これから3月以降には、欧米の景気の先行きと金融緩和がある。さらに日本では30年以上続いた金融政策の転換点がいよいよ近づいてきた。長く続いたマイナス金利解除と、その後の金融政策の正常化の流れが始まるわけで、株式市場に大きな影響を与えることは明白だ。

 日経平均は確かに上昇しているが、アメリカではアップルやアマゾン、テスラなどのマグニフィセント7が株式指数に大きな影響を与えているのと同じように、日経平均も225社の株価の指数というものの、例えば大型株の代表である、ユニクロのファーストリテイリング(9983)1社が指数の1割強を占めており、果たして株価全体を見渡せるものになっているのかは疑問でもある。

 高くなりすぎて手を出しにくい銘柄がどんどん増えていく中で、高配当と株主優待で注目される銘柄は、これからも少額で株式投資を始めたビギナーを含め人気を博すに違いない。

※株式投資はご自分の判断と責任に基づいておこなってください。

<文/佐藤治彦 チャート/googleファイナンス>

【佐藤治彦】
経済評論家、ジャーナリスト。1961年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業、東京大学社会情報研究所教育部修了。JPモルガン、チェースマンハッタン銀行ではデリバティブを担当。その後、企業コンサルタント、放送作家などを経て現職。著書に『つみたてよりも個別株! 新NISAこの10銘柄を買いなさい!』、『年収300万~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』、『しあわせとお金の距離について』、『安心・安全・確実な投資の教科書』など多数 twitter:@SatoHaruhiko

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