宮城県は2024年度、気仙沼市の気仙沼漁港に県内最大となる水深7・5メートルの「大水深岸壁」の建設を始める。大型巻き網船の誘致につながり、サバやイワシなどの水揚げ増加が期待できるほか、一部を耐震強化岸壁にすることで災害時も漁港機能を維持できる。27年度の完成を目指す。
県、2027年度完成目指す
石巻、塩釜両漁港の7メートルを上回り、東北では八戸漁港の9メートルに次ぐ深さとなる。
県によると、大水深岸壁の延長は約335メートル。市魚市場南側と商港岸壁をつなぐ形で整備する。現在は水深6メートルの岸壁の周辺4700平方メートルで、海底の土砂を掘削して7・5メートルの水深を確保する。
発生した土砂を活用して背後地7600平方メートルを埋め立て、荷さばき所などの漁港施設を設ける。総事業費は42億円。国が2分の1を助成し、県が3割、市が2割をそれぞれ負担する。
巻き網船は近年、漁の効率化やコスト削減、船内環境向上などを目的に大型化が進む。気仙沼漁港の現在の水深では、一部の巻き網船が入港できない状態のため、市と漁協などが20年に県へ建設を要望した。
背景には近年の漁獲量減少がある。市魚市場への水揚げ量の推移はグラフの通り。09年度以降は10万トンを下回る水準で推移しており、加工や冷蔵倉庫、運送など裾野が広い市内の水産業に影響を与えている。
東日本大震災では岸壁が沈下するなどし、水産業の再開が遅れた。教訓を踏まえ、県内の拠点漁港で初めて一部を耐震強化岸壁にする。
現場付近で今月末まで測量や地質調査などを実施する。23年度内に地元向けの説明会を開催し、詳細な設計に入る。工事着手は24年度の後半になる見通し。
県気仙沼地方振興事務所水産漁港部の佐藤智宏総括技術次長は「水産業の発展に寄与し、経済効果も期待できる。円滑に工事を進めたい」と語る。