電気代高騰は追い風 ワークマンやドンキの進化する「着るこたつ」

電気代の高騰を受け、節電タイプの暖房器具が注目を集めている。消費電力が大きいエアコンを使わず、温まることができる「着るこたつ」もその1つだ。各社が発売する着るこたつの特徴や消費者の反応、売れ行きをまとめた。

●職人向けから発展したワークマンの着るこたつ

 ワークマンのヒーターウェア「WindCore ヒーターシリーズ」は、ウェアの首の下や腰のあたりに電熱線(ヒーター)を装着。付属の充電式バッテリーを使用して体を温める仕組みで、使用後5分ほどで保温効果を実感できるという。

 温度は低温(約40度)、中温(約45度)、高温(約50度)の3段階から選択でき、一度バッテリーを充電すれば、最長で約16時間使用できる。また、バッテリーは夏の暑さ対策グッズ「ファン付きウェア」と使いまわしが可能。ウェアを変えれば、1年を通じて防暑&防寒対策ができる仕様だ。

 2019年にベストタイプを発売したところ、寒い環境で働く職人から支持され、人気に火が付いた。現在では、ベスト5種類、パンツ3種類、ジャケット4種類、ブランケット1種類、マルチパッド1種類の計14アイテム(3900〜5500円)を展開している。

 最新モデルでは、温度調節スイッチを内側に入れるデザインに変更した。同社広報担当者は「周囲からヒーターウェアだと気付かれにくく、普段使いしやすいようなデザインを採用しました」と話す。

 発売当初は、同社製品の中では高価格ということもあり、寒い中働く外仕事の職人のみをユーザーとして想定していた。ところが、いざ発売してみるとバイク、釣り、ゴルフなどのシーンで使用する人が多かった。また、寒さが本格化する前に女性が購入するケースも目立っているという。「家の中で節電のためにエアコンを使わない人が着用しています。 また、ガーデニングやアウトドアを楽しむために購入する人も増えています」(同社広報担当者)

 職人以外からも支持を集めるヒーターウェアの売り上げは、右肩上がりに推移。年々生産数を増やしているが、シーズン終盤にはほとんど売り切れる定番製品に成長した。

●ダメ出しから生まれたドン・キホーテの着るこたつ

 ドン・キホーテが昨年10月から発売している「動けるこたつウェア」。同商品はユーザーからの“ダメ出し”をもとに改良し、結果的に値下げにも成功した商品だ。

 ドン・キホーテでは「ダメ出しの殿堂 ドン・キホーテ-情熱的改善要求-」と題し、ユーザーからオリジナル商品ブランド「情熱価格」へのダメ出しを募集(2月末でサービス終了予定)。集まったダメ出しを開発部で議論・改善することで、新商品に生かす取り組みを行っている。

 動けるこたつウェアは、胸元から足先までをすっぽりと包み込み、内蔵されたヒーターで温める。本体は65(幅)×115(高さ)センチで、身長150〜180センチ、ウエスト最大約130センチまで対応する。着脱はボタン式で、身長に合わせて調節が可能。なで肩でもずり落ちないよう、H型のショルダーストラップを採用した。着るだけでなく、広げてひざ掛けのように使うこともできる。

 ヒーターは全面/腹部側と胸元側に分けてスイッチを設置し、部位に合わせた温度調節を可能とした。温度は3段階から選べる上、2時間で自動的に電源が切れるため、温まり過ぎる心配もない。

 同商品の前身は、22年にホカロンとコラボしたこたつウェアだ。サイズや着用方法など基本的な仕様は動けるこたつウェアとほぼ同じで、「エアコンを使わなくても温かく、節約になる」と人気を集めた。

 だが、電源がコードタイプだったため、その範囲内でしか利用できなかった。そのため、ユーザーからは「USB式だったらよかったのに」「モバイルバッテリーで使えるようにするとあちこち移動できる」「動けないぜ」といったダメ出しが寄せられた。

 そこで開発部は、電源をコードタイプからUSBタイプに変更。コードの長さ=可動範囲だったところが、家の中を自由に動けるようになった。また、コード部分をなくしたことで、結果的にコストカットが実現。こたつウェアが1万1800円だったのに対し、動けるこたつウェアは9980円と、機能性はアップしながら2000円の値下げに成功した。

●ゲーマーならではの視点で開発した着るこたつ

 ゲーミング家具ブランド「Bauhutte(バウヒュッテ)」を手掛けるビーズ社(大阪府東大阪市)は、ゲーマーが寒い時期に抱える“悩み”に着目した新商品「ゲーミング着るこたつ布団」(参考価格1万2800円)を発売し、話題を呼んだ。

 同社の開発担当者によると、寒い時期のゲーミング環境には課題があった。「ゲーミングPCはハイスペックであるため『熱暴走を起こしやすい』という弱点があります。暖房をつけると室温が高くなり、それによって熱暴走が起こりやすくなるリスクがあります。こうした事態を回避するため、ゲーマーの中には真冬でも暖房をつけずに過ごす人がいました」

 そこで、ピンポイントで温まれる「こたつ」に着目。こたつ布団に腕を通すためのアームホールと、こたつ布団を背中まで覆って留められるトグルボタンを搭載した。ユーザーはこたつに入り、アームホールに腕を通してトグルボタンを背中で留める。こうすることで上半身全体がすっぽりとカバーされ、「こたつと一体化=こたつを着る」ことができ、暖房をつけなくても全身が温まれるようにした。

 アームホールを設置することで、腕を自由に動かせる。だから、PCやゲーム操作に支障がなくなる。また、トグルボタンで固定しているので、布団自体がずり落ちにくくなっている。かさばらないよう厚みを抑えて設計しているので、もともとのこたつ布団の上に重ねる使い方もできるという。

 ゲーミング着るこたつ布団は上半身までしっかりと覆うため、一般的なこたつ布団よりも約1.5倍長くしている。また、軽さを実現するため、毛布生地の中に中綿と不織布アルミシートを内蔵。軽量ながらもこたつの温かさを逃さない保温性を確保した。

 電気代の高騰を追い風に、進化を続ける着るこたつ。各社のさらなる新商品開発に注目したい。

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