熊本県菊陽町に進出する台湾積体電路製造(TSMC)など、半導体関連企業の集積に伴う農地減少や人材確保といった地域農業への影響を探るため、熊本県内の農業関連団体と東海大が調査研究に当たる新組織を設立することが25日、分かった。企業進出による農地の工業化や都市化を見据え、持続可能な農業経営を探る県内初の組織となる。
TSMCの進出が決まって以降、県内では工業団地や住宅用地の確保に向け、菊池地域などで地主が農地の借地契約を解除するといった事例が増加。関連企業の進出が相次ぐ大津町や菊陽町では、交通渋滞の悪化といった影響が出ている。大津町で畜産を営む男性(35)は「日中の渋滞がひどいので飼料を夜間に運搬しており、既に支障が出て来ている」と話す。
こうした現状を受け、当事者らによる半導体企業集積による課題の共有が必要と判断。県農業法人協会の香山勇一会長ら農業経営者を発起人に、任意の研究会として新組織を結成することにした。JA関連のほか、各団体や個人の計23者が参加。関係者によると、認定農業者や法人など県内の農業関連団体が網羅的に参画する見通しで、県内では初めての動きという。
県内の大学で唯一農学部を持つ東海大が協力機関として加わることで、宅地化や工業用地化による農地減少の実態把握だけでなく、TSMC周辺の渋滞や人件費の高騰が農家に及ぼす影響などを調査する方針。新組織は国や自治体などの施策にも提言できるよう、情報提供し合う場としても活用する。
2月6日に熊本市内で発足総会を開く。香山会長は「農業者が個別に事情を訴えるには限界がある。情報が少なく、期待よりも不安が大きいというのが本音。半導体業界と共存共栄できる道を探したい」。東海大の木之内均熊本キャンパス長は「県農業の将来を考える契機にもなるのではないか」と話している。(馬場正広)