能登半島地震の復旧作業を妨げている、道路に崩れた家屋のがれきの除去作業が29日、石川県珠洲市で始まった。生活再建の一歩につながると期待されるが、家屋所有者の同意を得る手続きに時間がかかるため、進捗(しんちょく)は見通せない。 【写真】孤立住宅から女性救出、ヘリで支援物資到着…能登半島地震に挑む
重機を使って行われる道路に散乱したがれきの除去作業(29日、石川県珠洲市で)=伊藤紘二撮影
(高橋広大、涌井統矢)
倒壊した家屋の木片や家財道具が、市道に散乱する珠洲市宝立町鵜飼地区。ショベルカーなどが29日、路上を埋める屋根や木片を持ち上げたり、脇に寄せたりしていた。
地震前は車が相互通行でき、市民の生活道路として活用されていたが、今は車1台ががれきを左右に避けながらかろうじて通れる状況。電気工事など復旧関係の車両が通れず、自宅を見に行くことを断念する住民も多かった。通院のため、がれきの多い道を車で通るという同市野々江町の会社員、当毛宏行さん(54)は「毎日恐る恐る運転している。早く撤去してほしい」と話す。
家屋のがれきは、家の持ち主に所有権があるため、自治体が所有者の同意なく撤去すると、民法上の不法行為に問われる可能性がある。珠洲市は、がれきを撤去するのではなく、所有者の同意を得られたところから、がれきを敷地に押し込んで道幅を確保する方針を決定。鵜飼地区では沿道約100世帯の住民から同意を得たため、市内でいち早く作業を始めた。
市では今後、直線約1キロ分の道幅を広げる予定で、泉谷満寿裕市長はこの日、「貴重品を取り出したくても車を横付けできない市民がたくさんいたが、少しずつ可能になる。気持ちも前向きになってもらえるのでは」と話した。
ただ、市内では約6000世帯のうち4割程度の家屋が全壊したとみられ、そのがれきが道に散乱したままだが、市は被害の全容を把握できていない。市では被害が甚大な地域から順次作業を進めたい考えだが、市外の親戚宅などに身を寄せたり、2次避難したりする住民が多いため、市の担当者は「住民と連絡がとれず、同意を得るのが難しい」と頭を悩ませる。
輪島市も家屋所有者の確認に時間がかかり、作業開始は2月になる。一方、穴水町では除去が必要な場所が17か所・17棟と比較的少なく、住民と連絡も取りやすかったため、現在までに半数近くで作業を終えたという。