実験用サルの価格、コロナ流行前の5倍に高騰…中国輸出停止の影響か「20頭で1億円以上必要」

新薬開発や医学研究に必要な実験用サルの価格が高騰している。世界最大の供給国だった中国が、新型コロナウイルスが流行した2020年以降、輸出を止めている影響とみられ、日本製薬工業協会(製薬協)の調査では、コロナ流行前の5倍に跳ね上がった。厚生労働省の研究班が実態調査を開始した。 【図解】国別の動物福祉ランク、日本は中国と同じ「E」

 サルは、開発中の薬やワクチンの安全性や有効性を確認するため、人に投与する試験の前の段階で使われる。国内でのサルの繁殖は限定的で、ほとんどはアジア諸国からの輸入頼りだ。

 製薬協の昨年の調査では、実験用として主に使われるカニクイザルの価格が、新型コロナ前の1頭数十万~100万円程度から、約3年で500万円前後まで上がった。眼科領域の治療薬開発を目指し、大学発ベンチャー(新興企業)を設立した研究者は「サルの試験のために20頭で1億円以上必要。資金が足りず、開発が進まない」と訴える。

 急騰の最大の原因として、中国の輸出停止による世界的な供給不足が挙げられている。コロナ禍を機に、中国が自国内での医薬品開発を強化したことが背景にあるとみられている。19年に中国から約1100頭を輸入した日本は、代わりにカンボジアからの輸入を増やしたが、価格の大幅な低下にはつながっていない。

 厚労省研究班は昨年11月から、サルの需要供給見通しなどについて、製薬大手や新興企業、研究機関などへの調査を開始した。今年度内に調査結果をまとめ、提言を作成する方針だ。

 研究班代表を務める東北大の三好一郎教授(実験動物学)は「次のパンデミック(感染大流行)に備え、自国で研究を進める基盤として一定数のサルの確保が必要だ。まずは現状把握を進めたい」と強調する。

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