富士フイルムは2024年1月25日、熊本拠点(熊本県菊陽町)で半導体製造プロセスの基幹材料であるCMP(化学的機械研磨)スラリーの生産設備を本格稼働させたと発表した。
今回の設備は、電子材料事業の中核会社である富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(FFEM)が、熊本県に立地しディスプレイ材料を生産する富士フイルムマテリアルマニュファクチャリングの九州エリア(FFMT九州)に約20億円を投資して新設した。
加えて、富士フイルムは、FFMT九州を半導体材料の熊本拠点として始動させ、ディスプレイ材料のみならず半導体材料も生産し安定供給を図っている。CMPスラリーの国内生産は富士フイルムとして今回が初めてとなる。熊本拠点のある熊本県菊陽町は、半導体ファウンドリー大手TSMCが過半の株式を所有するJASMの工場が建設されるなど、国内における半導体生産の一大拠点として注目を集めている。
世界4拠点でCMPスラリーを生産可能に
国内外では、5G/6Gによる通信の高速/大容量化、自動運転の拡大、AI(人工知能)やメタバースの普及などを背景に、半導体の需要拡大と高性能化が見込まれている。このような中、半導体製造プロセスで使用する半導体材料では、より高品質/高性能な製品を安定的に供給することがますます重要となっている。
CMPスラリーは、硬さの異なる配線や絶縁膜が混在する半導体表面を均一に平たん化する研磨剤で、富士フイルムの調べによれば年率10%の市場成長性を有している。同社は、米国アリゾナ州や韓国天安市の他、台湾の新竹市にCMPスラリーの生産拠点を有し、安定供給と品質に対する高い顧客要求に応え続けることで、CMPスラリーの売り上げを拡大させている。
今回、FFEMでは、ディスプレイ材料の中核生産拠点であるFFMT九州の工場内に、CMPスラリーの最新鋭の生産設備/検査機器を導入し本格稼働させた。新たな設備/機器と、ディスプレイ材料の製造で顧客の高い品質要求に応えてきたFFMT九州の人材/生産ノウハウなどを組み合わせて、高品質/高性能なCMPスラリーを生産している。
今後、富士フイルムは、CMPスラリーの国内生産化により国内の顧客への迅速供給を図るとともに、日本が加わり生産能力が拡大した世界4拠点のCMPスラリーの生産体制でグローバルの需要増に応えていく。
さらに、FFMT九州では、イメージセンサー用カラーフィルター材料を生産する最新鋭設備を2025年春に稼働させ、半導体材料の生産品目を拡充する。
なお、富士フイルムは、フォトレジストやプロセスケミカル、ポリイミドなど半導体製造の前工程から後工程までのプロセス材料や、イメージセンサー用カラーフィルター材料をはじめ、広範囲な波長の電磁波や光を制御する機能性材料群である「Wave Control Mosaic(WCM)」を展開している。
これらの幅広い製品と、グローバルでの安定供給体制、高い研究開発力、顧客との強固な信頼関係を強みに事業成長を加速させ、2030年度には電子材料事業で5000億円の売り上げを目指す。今後も、最先端の半導体材料を開発/提供していくことで、半導体産業の発展に貢献していく。