JR仙台駅西口の商業施設「EDEN(エデン)」(仙台市青葉区)が31日に閉館を迎えます。施設が位置するのは「杜の都の顔」と呼ばれるエリア。青葉通を挟んで向かい側にあるさくら野百貨店仙台店の跡地利用を含め、再開発の動きが注目される一帯です。そこで、大型店が立ち並ぶ仙台駅西口が大きく変化した1991年から現在に至るまでの激動の約30年間を、河北新報社の記事や写真で振り返ってみました。(編集局コンテンツセンター・三浦夏子)
昭和の「駅前の顔」エンドーチェーン仙台駅前店
まず、現在の「イービーンズ」の場所からさかのぼっていきましょう。
「28年の歴史に幕 エンドー仙台駅前店 閉店セールにぎわう」
91年8月26日、河北新報は仙台市青葉区のスーパー「エンドーチェーン仙台駅前店」の閉店をこう伝えています。11月に大手スーパー西友による「仙台SEIYO」として改装オープンすることになりました。記事ではエンドーチェーンを「駅前の『顔』」と紹介。「一時代を築いていた」と振り返っています。
実際に、64年にビルを構えて以降、70、80年代は家族連れでごった返しました。芸能人やアイドルがやって来て、公開番組の収録をした1階「サテライトスタジオ」、子ども向けプールがあった屋上などが大人気。シーラカンス、恐竜などの展示会も次々催されました。展示物に触れた記念に「タッチ証明書」がもらえるシステムも名物でした。80年代には、エリマキトカゲなど一世を風靡(ふうび)した珍しい動物もやって来ました。
閉店セールに訪れた買い物客の中には「さみしい気もするが、新しい店舗で心機一転頑張ってほしい」と語る人もいたそうです。
ちなみに91年は、今や仙台駅東口を代表する商業施設となったヨドバシカメラが仙台に初進出しています。次の写真で見るとエンドーチェーン左隣のビル1階に入居していました。
親しまれた光景が一変した91年 エンドー→SAIYO 丸光→ビブレ 十字屋は全面改装
そして、この年は昭和に慣れ親しまれた西口の光景ががらりと変わった年でした。
エンドーチェーンが閉まる9日前、8月16日には百貨店「ダックシティ丸光仙台店」が閉店しました。丸光と言えば、定時で「荒城の月」のミュージックサイレンが流れていたことは今も語りぐさです。
46年に創業した合名会社「丸光」の名前が消え、全面改装を行った上で同年10月に「仙台ビブレ」として生まれ変わりました。音楽ソフトの大型販売店「HMV」が東北初進出して話題になりました。東京・渋谷、横浜に続く国内3店舗目でした。
9月には、仙台十字屋が婦人服売り場を広げる全館改装を実施。大型店の改装が集中したことを受け、91年10月4日の紙面では「東北最大の仙台商圏が本格的な流通戦争に突入した」と伝えています。
90年代後半にかけてフォーラスなど一番町へ人が流れる
今でこそ、仙台市内の繁華街でも人の流れが際立っている仙台駅周辺。しかし90年代は魅力に陰りが見られているという指摘もありました。
「仙台駅前の魅力って?」「集客力、一番町に後れ」の見出しが躍る97年2月5日の紙面。7月にSEIYO仙台店が閉店することを受け、西口の問題を分析しています。
SEIYO周辺より青葉区一番町のファッションビル「仙台フォーラス」前の通行量が多くなっている調査結果から「一番町方面に人が流れていることもある」と説明しています。高い地価なども相まって仙台駅前の顔であるエリアが空洞化しないか懸念が示されています。
2000年前後に再びの変革期 SAIYO→イービーンズ ビブレ→さくら野 ams西武→ロフト
その現状を打開する起爆剤となったのが、SEIYO跡地に97年11月開店したイービーンズ。東北における渋谷ギャル系ファッションの発信地となっていきました。ビルには東北初出店の「ジュンク堂書店」、カメラや家電の量販店「さくらや」も入り、幅広いジャンルの専門店が集まるショッピングビルとなりました。
2000年代に入ると、駅前大型店はさらなる変革期に入っていきます。
02年10月には、「仙台ビブレ」が「さくら野」に変更して再スタート。さくら野の由来は同社が店舗を構える青森、岩手、宮城、福島に桜の名所が多いことをにちなんだといいます。
変化はさらに加速します。翌03年8月、「21年の歴史に幕」が下ろされたのは、「ams西武仙台店」。1982年の開店以降、プロ野球西武の黄金時代(94年に至る13年間で11度パ・リーグ優勝)にも重なり、秋には毎年のように優勝記念バーゲンセールが行われていました。
百貨店から専門店へ
2003年の営業最終日には感謝の意味を込めたひまわりの花約2000本が配布され、多くの買い物客が閉店を惜しみました。そして、同年10月、東北初出店となる総合雑貨専門店「ロフト」が、同じ場所に出店することが正式に表明されました。百貨店が専門店へと生まれ変わっていく流れが加速していきました。
05年十字屋閉店 ヤマダ電機LABIにリニューアル
05年には駅前を代表する大型店の一つだった十字屋仙台店が閉店。市民からは「ほかのデパートより親しみやすいのでファンが多かったのに」との声が上がったといいます。地下飲食店街は近隣のビジネスマンを中心に根強い人気を誇っていました。その後は、ヤマダ電機LABI仙台が入る仙台TRビルとなりました。
09年仙台ホテルが159年の歴史に幕 11年にエデンへ
そして、09年、現在エデンが位置する場所で営業していた老舗ホテル「仙台ホテル」が159年の歴史に幕を下ろしました。施設の老朽化が原因で、営業終了日には従業員が宿泊客に深々と頭を下げました。エデンはその2年後の11年7月にオープンしました。開店初日は約600人の行列ができたそうです。
17年にはさくら野百貨店仙台店を経営するエマルシェが、仙台地裁に自己破産を申請し、破産手続きの開始が決定。売り上げ減少が主因とされ、代理人の弁護士によると負債額は約31億円に上るといいます。
同年2月に閉店した店舗の跡地を巡っては、20年に跡地の約8割をディスカウント店「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH、東京)が取得。商業施設、ホテル、オフィスを組み合わせた複合ビル構想を発表しています。
平成から令和にかけて目まぐるしく変化した仙台駅西口。時は流れても、杜の都に訪れた人が最初に目にする場所として仙台を代表するエリアであることに変わりません。エデンの閉店が分かった昨年11月には、郡和子仙台市長が会見で「何らかの(再開発に向けた)動きがあることを期待する」と語り、「市の支援が必要であれば、協力したい」と前向きな姿勢を示しました。近年にぎやかさを増す東口とともに、西口のこれからに注目が集まります。