仙台市2024年度予算案 コロナで膨らんだ歳出戻らず 遠い収支均衡、将来にツケ

 新型コロナウイルス禍で膨らんだ財政規模は元に戻らなかった。仙台市の2024年度一般会計当初予算案は23年度当初と比べて334億円増え、3年連続で過去最大を更新。基金の取り崩しなどで399億円の収支差を埋めた急場しのぎの対応に、将来を担う若い世代の不安は拭えない。

 新型コロナウイルスの5類移行で、感染対策費は23年度当初比で約100億円減ったものの、政府が物価高対策として打ち出した定額減税に伴う現金給付の事業費がほぼ同規模で置き換わった。

 扶助費と人件費は保育士らの処遇改善に向けた事業者への給付費増などで計208億円の上乗せとなった。投資的経費も学校施設の更新や改修の時期が重なり、168億円の増加。歳入は市税が18億円増えたが、実質的な収支均衡に程遠い状況と言わざるを得ない。

 財源不足の穴埋めに、今回も市債管理基金からの借り入れ(40億円)や保有株式の売却(20億円)を講じた。今後10年間も年270億~501億円が不足する見通し。「緊急避難的な対策」(財政課)が恒常化し、財政再建の道筋は全く見えない。

 郡和子市長は子育て施策で、男性の育児休業取得支援、妊婦健診費用の助成引き上げに踏み切る一方、市議会に実施を求める声が根強い子ども医療費助成拡大や学校給食無償化に乗り出す余裕はなかった。敬老乗車証制度の負担割合引き上げの決断は財政面から見れば、やむを得ないだろう。

 22年度決算で、貯金に当たる財政調整基金の残高は4年ぶりに減少し、市債を含む通常債の残高は8年ぶりに増加した。市が施策を効果的に展開する上で、安定した財政基盤は必要不可欠だ。2期目の最終年に差しかかる郡市長には、事務事業を抜本的に見直し、行財政改革に本腰を入れてほしい。将来にツケを回す市政運営では元も子もない。
(解説=報道部・佐藤理史)

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