宮城県、救急搬送基準に精神疾患を追加 受け入れ病院リスト化、迅速な対応目指す

宮城県は、救急搬送を受け入れる医療機関を傷病ごとに一覧化した「救急搬送実施基準」を約3年ぶりに改正する。長らく検討中だった精神疾患の項目を追加し、身体疾患との合併症がある患者を受け入れる県内60病院のリストを初めて作成した。消防は基準を参考に受け入れ病院を探し、迅速な搬送につなげる。

基準3年ぶり改正、消防の参考に

 昨年12月の県救急医療協議会で改正案が了承され、近く関係先に通知する。各病院への意向調査(昨年7月末)を踏まえ、精神状態が不安定な患者の身体疾患や外傷に対応できる10病院、精神状態が安定している身体合併症患者を受け入れる50病院を、県内4医療圏ごとに一覧にまとめた。

 救急の現場では、患者の精神状態の不安定さが精神疾患由来か身体疾患由来か分からない場合もある。実施基準は、こうした事例は態勢が手厚い10病院に搬送することを明文化した。

 仙台市消防局は「判別が困難な事例はここで診る、という線引きがあれば活動しやすい」(救急課)と期待する。

 身体合併症を伴わず、精神疾患の症状で119番があった患者は、精神科のかかりつけ医や県立精神医療センター(名取市)が設ける相談窓口の判断を仰ぎ、指示された精神科病院に搬送する。

 実施基準によると、仙台医療圏で精神状態が不安定な身体合併症に対応するのは東北大病院、仙台市立病院、仙台医療センター、東北医科薬科大病院の4病院で、精神状態が安定している身体合併症の受け入れ先には24病院が名を連ねる。 県が主導する仙台医療圏4病院の再編構想では、精神医療センターの富谷市移転の理由に身体合併症への対応が挙げられる。同じく移転する東北労災病院(仙台市青葉区)と合築すれば、精神科単科では難しかった合併症患者の受け入れが可能になるとされる。

 精神医療関係者の一部には「現在、身体合併症患者の搬送先が確保できているなら、あえて精神医療センターを富谷に移す理由は薄れる」といった声がある。

 東北労災は現在は精神状態が安定した身体合併症に対応する病院に数えられる。精神医療センターとの合築後、精神状態が不安定な患者まで受け入れ態勢を広げるのかは現時点で未定。

 県医療政策課は「精神面で難易度が高く、精神医療センターでしか診られない患者がいる。そういう患者に身体疾患がある場合でも受け入れられるようにするのが再編の趣旨。東北労災とどう連携すればそれがかなうのか、協議を通じて具体化していく」と説明する。

タイトルとURLをコピーしました