年金生活者、インフレ影響大でも意外な結果 消費は「顕著な伸び」

インフレによるダメージが最も大きい年代は年金生活者だが、消費を最も活発化させているのも年金生活者だった--。三井住友信託銀行が世代や年収ごとの消費傾向を踏まえ、インフレダメージの大小と消費支出の変化を分析したところ、意外な結果が出た。同行は「悲壮感漂う年金生活というわけではなさそう」とみている。

 インフレ発生前の2020年と足元の23年(1~10月)を比べると、消費者物価指数(CPI)は5・3%上昇した。しかし、これはいわば「平均値」。物価の上昇は品目によってバラツキがあり、単身か2人以上かといった世帯の形態や世代、年収によっても、家計が受ける実際のインフレダメージは異なる。中小企業社長の「大逆転劇」

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 そこで、世代別の消費傾向を加味して仮想的にCPIの上昇率を算出したところ、20代以下の4・5%増に続いて、30代は5・3%増▽40代5・2%増▽50代5・3%増▽60代以上6・2%増▽年金生活者は6・9%増――となり、インフレダメージは、おおむね若年層ほど低く、年齢が上がるほど高かった。

 では、インフレにより消費支出はどのように変化したか。物価上昇の影響を除いた実質消費支出の変化をインフレ前後で比較すると、いずれの世代でも物価上昇が著しい「食料(外食を除く)」(4・1~6・7%減)や「家事用消耗品」(9・8~18・9%減)の消費減少が目立った。一方、新型コロナウイルス禍の反動もあって「外食」(14・7~34・0%増)、「教養娯楽」(6・9~13・7%増)が増えた。

 世代別の特徴をみると、若年層はインフレのダメージが比較的小さいながらも、インフレに対して敏感で支出を抑える傾向が強かった。30代以下の世帯では、月間の消費支出は全体で3・5%減少し、このうち「住居」(13・7%減)▽「教育」(12・5%減)▽「被服及び履物」(8・9%減)への支出を大きく減らしていた。

 逆に、最も消費が活発化しているのは、インフレダメージが最大の「年金生活者世帯」だった。月間の消費支出は4・2%増加し、内訳としては「外食」(34・0%増)▽「通信」(43・6%増)▽「交際費」(14・2%増)▽「教養娯楽(主に旅行)」(13・2%増)などへの支出を増やしていた。

 これらの伸びが大きいのは、コロナ禍中に外食や旅行を控えたり、これまでインターネット利用が少なかったりする反動もあるとみられる。しかし、30代以下だけでなく、40代と50代がともに1・0%減と消費を減らし、60代も1・4%増と小幅な増加なのに比べ、年金生活者世帯の消費の伸びは顕著だった。

 年収別では、最も低い年収層(平均357万円)で消費を抑える傾向が強く、月間の消費支出が全体で4・3%減少した。コロナ禍の反動で消費が増えた娯楽関連でも低年収層の伸び率は鈍く、教育費や教養娯楽費では他の年収層との差が一段と開いた。同行は「親の年収による子どもの教育格差がインフレ下で拡大する懸念がある」と指摘している。【嶋田夕子】

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