復興サツマイモ「仙台金時」ピンチ乗り越え増産へ 仙台の業者が自己破産→名取の生産者引き継ぐ

東日本大震災の復興の一環で栽培が始まったサツマイモ「仙台金時」が生産中止の危機を乗り越え、増産されることになった。苗の仕入れを独占する生産販売会社(仙台市太白区)の自己破産で存続が危ぶまれたが、一部の生産者が販路や名称を引き継いだ。関係者らは「ピンチをチャンスに変え、再出発したい」と意気込む。

 [仙台金時]震災後、復興支援の一環で徳島県産サツマイモの高級ブランド「鳴門金時」を宮城県内で栽培し、ブランド化を図った。ほくほくとした食感や上品な甘みが特長。焼き芋や洋菓子、天ぷらなどに重宝される。

徳島の育苗業者と交渉し苗を確保

 「仙台金時は、繊維が少なくペースト状にしやすい。菓子やスイーツ、高級食材に向いている。作った分だけ買い取るので、どんどん増産してほしい」

 生産、加工、流通の三者が集まった1月29日の生産計画会議で、仙台金時の増産が確実となった。生産量は前年比6倍となる30トンに決まった。

 宮城県名取市の北釜地区で生産に携わる大槻寿夫さん(81)は「もっともっと仙台金時の知名度を上げていきたい」と力を込める。

 仙台金時は、震災後に仙台市に移住した徳島県出身の男性が2012年に生産を始めた。同県鳴門市の農家から高級ブランド「鳴門金時」の苗600株を取り寄せ、宮城県内で栽培し「仙台金時」と命名した。当初の収穫量は500キロほどだった。

 名取市の農業生産法人「名取北釜ファーム」は2020年に男性からの受託生産で参入し、5トンを栽培した。全体の収穫量は10トン前後で推移した。

 順調に見えた生産活動は、徳島出身の男性の会社で23年春に不適正会計が発覚し、同年9月に同社が自己破産したことで暗転した。北釜ファームも委託料を受け取れず、130万円の損失を被った。

 「それでも仙台で作れるおいしいイモを絶やしたくなかった」

 北釜ファームは秋以降、徳島の育苗業者と直接交渉して苗を確保。イモの納入先からも取引継続の了承を得て、再出発の道筋が整った。今年5月に新たな苗を植え、秋に復活した「仙台金時」の収穫を見込む。

 北釜ファームの鈴木英二社長(82)は「紆余(うよ)曲折はあったが、仙台金時は魅力的なサツマイモだ。地元農家や新たな就農者を呼び込んで、北釜地区を一大産地にしたい」と語る。

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